Track.5:<夢>涙の後輩ちゃんと雨のウッドハウスで。
//後輩と先輩(リスナー)森の中のウッドハウスに着く。
お疲れさまです。
ここが目的地です。
このウッドハウスは私の秘密基地なんですよ。
さあ、どうぞ。
//後輩、ウッドハウスの扉を開けて先輩を中に招く。
//SE:扉の開く音
すごい雨ですね。
今までこんなことなかったのに……。
あ、タオル出してきますね。
先輩はそこの椅子にどうぞ。
楽にしておいてください。
//SE:雨音
お待たせしました。
バスタオルです。
風邪を引かないようによく拭いてくださいね。
あと、こちら温かいカモミールティーです。
カモミールティーはハーブティーの一種でリラックス効果があるんですよ。
いい香りでしょう。
冷めないうちにどうぞ。
ええ、私もいただきます。
正面の席に失礼しますね。
//SE:雨音(先ほどより強い)
そんなにちらちら顔見ないでください。
飲みづらいじゃないですか。
ふふ、冗談ですよ。
……。//後輩は俯き、次には顔を上げ寂しそうに笑う。
先輩、今夜はありがとうございました。
とっても、楽しかったです。
ごめんなさい。
先輩を癒すための夢だったのに。
そんな顔させちゃったらダメですよね。
あちらにアロマセットとふかふかのベッド、抱き枕にハーブティーのおかわり。
たくさんの癒しを集めてみました。
朝までの時間、よければ先輩はここで過ごしてください。
ゆっくりと体と心が休まることを祈ります。
私は……。
帰ります。
だって、私がいたら落ち着かないでしょう?
でも、このカップ一杯分はどうか側にいさせてくれませんか?
ふふ、先輩はやっぱり優しいですね。
ずっといていいなんて。
先輩、大丈夫です。
私は一人で生きてきました。
これからも一人で生きていけます。
だから、心配しないで。
それに、今夜こうして大好きな先輩と素敵な夢を見られた。
私、この思い出があれば大丈夫な気がするんです。
ありがとう、先輩。
夢のような夢でした。
ごちそうさま。
では、先輩。
さようなら。
//後輩が出ていこうとする。
……先輩、止めないでください。
違う。
私わかってた。
先輩なら止めてくれるって。
優しい言葉をかけてくれるって。
それに甘えて、私は……。
最低だなぁ……。
先輩。
私、先輩が好きです。
先輩として好きだなんて言いましたけど、違います。
恋を、してるんです。
はじめは純粋な気持ちでした。
あのね、先輩。
私が文芸部に入った理由は理解者が欲しかったからなんです。
誰も信じられないのに。
一瞬の気の迷いですね。
入部したその夜には後悔して、辞めようと思いました。
だけど先輩が声をかけてくれて、頑張っている姿を見て、辞められなくなっちゃって。
こんな私に優しくしてくれる感謝。
そして部を存続させようとする先輩への尊敬。
そんな気持ちが日に日に芽生えていきました。
そして、もしかしたら先輩が理解者になってくれるかも。
そんな淡い期待を抱いていました。
でもね、それだけじゃなくなっちゃったんです。
先輩を独り占めしたくなった。
他の部員が来ないのが嬉しくてたまらなかった。
先輩と二人の時間がずっと続けばいいと思った。
私、醜いんです。
今日ここに来たのも、先輩を癒すためなんかじゃない。
きっと私が先輩に会いたかったから。
先輩に優しい言葉をかけてほしかったから。
ごめんなさい。
もう引き留めないでください。
私、これ以上先輩といたらもっと嫌な人間になりそうです。
……気を遣わなくていいですよ。
先輩がどうして私なんかを好きになるんですか。
あんなひどい態度を取る私を。
優しさなんてありましたか?
素直にお礼なんて……言った覚えが……。
冷たくしてばっかりでしたよ?
それは、先輩いくら何でも私をよく言いすぎではないでしょうか……?
でも、でも……。
それが本当なら――。
私、何も隠しきれてないじゃん。
バカ……。
先輩、私、やっぱり先輩が好きです。
だから、今夜だけでも側にいたい。
それから……。
恋人にしてくれませんか……?
そ、そんな勢いづいて答えなくても!
でも、ありがとうございます。
すごく、嬉しいです。
この夜は宝物として胸にしまって生きます。
だから、今は――。
ふふ、先輩ったら。
そうですよ。
全部全部夢だから忘れちゃうんです。
でも、先輩が忘れないって言ってくれるなら――。
信じちゃいそうになるじゃないですか。
ありがとう、先輩。
あの、その、お隣の席に座ってもいいですか?
手を繋ぎたいんです。
ふふ、夜は短いから積極的にいっちゃいますよ。
//後輩は正面の席から、先輩の隣の席に移る。
//後輩との距離が近くなり、声とともに呼吸も聞こえてくる。
失礼します。
先輩の手、あったかいですね。
どうして顔を逸らすんですか?
せっかく隣にいるんですから、よく見せてください。
……こんなにちゃんと先輩の顔を見るのは初めてですね。
あれだけ長い時間二人きりで過ごしてきたのに。
変なの。
でも、それがこんなにも嬉しい。
ええ、とっても嬉しいです。
雨、止んできましたね。
あ、虹も出てます。
夢で虹なんてはじめて見た。
確かに、私の気持ちとリンクしてるのかも?
なんだか照れ臭いですね。
ふふ、全部先輩のおかげです。
ありがとう、先輩。
大好きです。
≪To be continued.≫
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