第2話 一旦落ち着こう

 暫くして。


「ふぅ…オーケー落ち着いた。で? 当然馴れ初めやらなにやらあるんだよな?」


 なんとか調子を取り戻したオレは彼らに訊ねる。


「「「「「「なれそめ…」」」」」」

「…揃いも揃って何だその何か言いたげな目は」


 馴れ初めと聞いて彼らは一斉にオレの方を見て何か言いたげな表情をした。


 な、なんなんだ? オレが何かしたのか?

 だが心当たりなんて……ありまくりでわからんな…。



 小さい頃からオレ達はよく色んな事に巻き込まれていた。

 そのため幼馴染み達とは様々な思い出があり、濃すぎる記憶だ。


 例えばひったくり犯にぶつかり7人がかりで確保したり…例えば普通の人間には視る事の出来ないモノが見えるヤツがどっからか引っ付けてきた怨霊?悪霊?を皆で除霊するために奔走したり…例えば異世界の記憶を持った奴が幼なじみ以外にも居て絡んできたり…王子の恋愛事のゴタゴタがあったり…そしてたまにスポーツマンな幼なじみを応援するというマトモな青春を送ったり…。


 後ぶっ飛んだヤツだと人外の幼なじみがどっかの惑星破壊したとか言って皆(幼なじみ)を震撼させたりだとか…。


 …あれ、コレ俺のせいじゃなくね?

 なんでこんな目で見られてんの? 可笑しくね?

 色濃い時間を過ごしたとしてもオレだけが原因じゃないじゃん?


 オレは幼馴染み達と違って思春期によくあるグレて不良やってちょっとだけ他の人と比べて変わった格好してるだけの高校生よ?

 因みに格好はチャイナ服。ちゃんと男用の服だぞ☆


 目立つからイヤだけどお家の事情というやつだ。目立つには目立つがそこは幼馴染みの力。コイツらの顔面のお陰でオレの服は霞んで見える。


 幼馴染み達は老若男女関係無くモテるイケメン揃いだった。


「…やっぱ馴れ初めはいいや。お前らが幸せならそれでいい」


 (イチャラブ雰囲気に)ちょっとめんどくさくなり良いことを言ってしまったぜ…まぁ恥ずかしさが出てきてコイツ等の方向けないけどな。


 ガタリ‥席を立つ。


「ま、取り敢えずおめでとさん。そんな目の前で揃いも揃ってイチャラブされたら砂糖吐きそうだしオレ帰るわ。本当に何で気づかなかったんだろうな…あ、ご祝儀代わりに御代払っとくからそのまま帰ってもいいから。じゃっ」


 アディオス!


 言っていなかったが此処は某ポテトやらドリンクやらハンバーガーやらが安くて美味い店だ。


 学生が稼ぎ、貯めて、6人分の飯代を払うというのも大変だ。安いと言えども6人は多い…。

 なのでオレはドリンクだけ頼み水分補給。


 オレは颯爽とその場を離れ帰路に着く。

 お祝いも直ぐに終わってしまったな。←自分が終わらせた


 いやぁ…にしてもアイツ等付き合ってたんだな…。やけに距離近いなとは思っていたが、小さい頃から一緒の幼なじみなら距離がバグっても可笑しくないとどこかで自分を納得させていたようだ。


 付き合っていると打ち明けられてから彼らの放つイチャラブした雰囲気?とでも言おうか、それが満遍なく辺りに広がっているのを幻視した。何故気づかなかったしオレ。


 多分あれで悪霊も寄ってこないんじゃないか?

 …いやでもカップルに並々ならぬ恨みを持っているならタチの悪いのが憑きそうだな…まぁオレには視えないのだが。


 あそこまで堂々とイチャイチャしていたのに気づかなかったオレって…うわぁ、我ながらショック。5歳からの付き合いなのに。


 ズゴッ!‥と炭酸飲料を飲みきり近くのパーキングエリアのようにゴミの分別が豊富なゴミ箱が偶然あったのでそこに捨てた。

 あの甘い空気にちょうどいい刺激だった。


 あの空間は暫く甘い匂いでもしそうだなとはっ、と笑った。幸せそうな顔で笑うアイツ等の顔が浮かぶ。

 数年後には幼なじみの身内だけで結婚式でも立ち上げるか?と半分冗談で思う。


 あーあ。

 これからアイツ等と遊ぶの控えた方がいいんかね?


 元からオレは喧嘩・バイト・勉強の三拍子で忙しく、アイツ等と遊ぶ回数は子供の頃に比べて各段に減っていた。


 喧嘩を減らせばいいって思うかもしれないが、それが出来ないワケがある。

 …まぁどの道喧嘩は二十歳までって決めてるから辞める事に変わりは無いんだが。

 後数年だ。


 ポケットに何故か入っているクラッカーをポケットの中で弄りながら、長い足で帰路を歩む。

 クラッカーに関しては昨日恋人が出来た報告を受け、家にあったパーティーグッズがこれしかなかったので急いでポケットに入れたという経緯がある。


 突然過ぎんねん、アイツ等。(突然のエセ関西弁)


 何も準備も出来ずに取り敢えず祝おうと集まってもらい報告されたのがアレだ。


 衝撃的過ぎるんだよっ!!!

 普通好きな人が居るとか相談されて知って応援して…って感じで知るんじゃないのか?

 いやでも告白されて突然付きあう事もあるか。


 まぁどの道相手は幼馴染み達だったので相談のしようも無いか?


 少なくとも店内で話す内容じゃ無かったのは確かだな。

 人少ない時間帯で良かった。


 そうしてそんな思いを胸にオレは一人帰り道を歩いた。

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幼馴染み達(全員男)にめでたく恋人が出来たらしい。 ピピ @Kukkru

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