第11話 二人で見つけた未来
不安を少しずつ乗り越え、ハルトとレニの関係はさらに深まっていった。レニは、ハルトに自分の気持ちを話すことができたことで心が軽くなり、以前よりも前向きに物事に取り組めるようになっていた。彼女は少しずつ自分の絵に没頭する時間を増やし、気づけば絵を描くことが日常の一部となっていた。
そんなある日、ハルトから突然提案があった。
「レニ、今度の週末、どこか遠くに行ってみない?」
レニは驚いてハルトを見た。「遠くって…どこへ行くんですか?」
「実はね、最近調べてたんだけど、少し離れたところにある自然豊かな場所があって、そこに行ってみたいと思ってるんだ。気分転換にもなるし、ちょっとした旅行って感じでさ。」
レニは少し戸惑いながらも、ハルトの提案に興味を抱いた。「旅行…今まで一人で遠出したことがほとんどないんです。でも、ハルトさんと一緒なら行ってみたいです。」
「決まりだね。準備は俺が全部やるから、安心して楽しもう。」ハルトは嬉しそうに笑った。
---
週末、二人は小さな旅行の準備を整え、電車に乗って目的地へと向かった。ハルトが選んだのは、山と川が広がる美しい風景の中にある小さな村だった。そこには、自然と触れ合いながら静かに過ごせる場所があり、二人でリフレッシュするにはぴったりの場所だった。
電車の中、レニは少し緊張していたが、ハルトの隣にいると不思議と安心感が湧いてきた。
「ハルトさんは、こういう場所によく行くんですか?」レニが尋ねた。
「いや、実はこういう旅行は久しぶりなんだ。車椅子生活になってからは、遠出することが減ったんだけど、最近はもっと外の世界を見たいと思うようになってね。レニと一緒なら、どこにでも行ける気がするんだ。」
その言葉にレニは少し恥ずかしそうに微笑んだ。「私も、ハルトさんがいれば安心していろんなところに行けます。」
---
村に着くと、空気が澄んでいて、静かな時間が流れていた。二人は川沿いをゆっくりと歩きながら、周囲の美しい風景を楽しんだ。鳥のさえずりや川のせせらぎが、二人の心を穏やかにしてくれる。
「なんだか、絵を描きたくなる景色ですね…」レニは静かに言った。
「そうだね。こんなに綺麗な場所だと、自然とインスピレーションが湧いてくるんじゃない?」
「そうかもしれません。最近、少しずつですけど、前より自分の絵に自信が持てるようになってきました。ハルトさんのおかげです。」
「それは嬉しいよ。レニの絵、いつか俺にも見せてくれるのが楽しみだな。」
レニは照れながらも、小さく頷いた。「もう少し上手く描けるようになったら、見てもらいたいです。」
---
夕方、二人は村の宿に到着し、静かで落ち着いた時間を過ごしていた。外には満天の星空が広がり、ハルトとレニはしばらくの間、言葉を交わさずにその美しい光景を眺めていた。
「星がこんなに綺麗なの、久しぶりに見ました…」レニは感動したように呟いた。
「本当に。都会じゃこんなにたくさんの星を見ることはないもんな。こういう場所に来ると、なんだか小さなことが気にならなくなるよね。」
二人はしばらく星空を見つめながら、ゆっくりと時間を過ごした。
「ハルトさん、これからも一緒にいろんなところに行きたいです。」レニは、ふとした瞬間にその気持ちを口にした。
「もちろん、これからもいろんな場所に行こう。そして、どんどん自分の世界を広げていこうよ。俺たち、二人ならきっとどこへでも行けるよ。」
ハルトのその言葉に、レニは心の中に確かな安心感を覚えた。彼と一緒にいる限り、自分はどこまででも進んでいける、そんな気がした。
---
その夜、二人は静かな村で穏やかな時間を過ごし、明日からの新しい挑戦に向けて力を蓄えた。彼らの未来にはまだ見ぬ風景や、新たな出来事が待っている。けれど、今はこのひとときを大切にしながら、少しずつ前に進んでいくのだ。
それは、二人で見つけた新しい未来への第一歩だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます