第2話 両親の説得
「そんな……家から出て行けと言うんですか?」
デイジーはショックを受ける。
なかなか結婚相手の見つからない現状。
両親の心配はわかる。しかし、都会はきっともっと華やかな人が沢山いる。
今ですら埋もれてしまっているのに、更に目立たなくなってしまうのでは無いだろうか?
父のジョン・スミシー伯爵は、そうではないと首を振る。
妹達と同じ鮮やかな金色の髪がサラサラと揺れる。
デイジーには遺伝しなかった綺麗な色の青い瞳で真っ直ぐ大人しい娘を見つめる。
顔立ちの方はバッチリ遺伝しているが。
「お前は私たちの自慢の娘だが、こんな田舎では正しく評価出来る人材がいないんだ。
私が上手く見つけて来てやれれば良かったが……」
母のジェーンも、もう決定事項だと身を乗り出して説得してくる。
妹達そっくりの華やかで、いつまでも若々しい自慢の美人な母。有りがちな髪と瞳の色だけはデイジーも受け継いだ。
「都会なら、きっと良い人見つかるわ!
貴女は本当は優秀なんだから頑張ってきなさい!」
両親が既に決めている事ならば、デイジーには拒否権は無い。無いのだが、不満を表明するくらいは許されるはず。
王宮送りにされる前に今ここで言いたい事は言っておく。
「でも、王女の侍女なんてやりたい人は幾らでもいるんでしょう?
私みたいな地味なのが務まるかしら?
お父様はどんなコネで私をそんな名誉職に捻じ込んだの?」
「ん?まあなんだ……ベアトリーチェ様は少し気難しい方らしくてな。
中々侍女が居着かないで直ぐ止めて困ると知り合いから相談されて……。
いや、安心しろ!あの二人の双子を手懐けているお前なら大丈夫だ!」
どうやら父の友情と見栄っ張りに巻き込まれたらしい。
デイジーため息を吐く。
「お父様もお母様も期待しないでくださいね。
それならきっと、私もこちらに直ぐ戻ってくるでしょうから」
両親はデイジーが受け入れてくれたのを見て、あからさまにホッとしたようだった。
しかし、厄介なことになってしまった。
デイジーとて、これまで出会いが一切無かったわけではない。
少し素敵だな……と思う男性と出会って仲良くなっても、その彼が双子の妹達、ローズとリリーに出会うとデイジーのことはスッカリ忘れてしまうのだ。
デイジーの忘れられ易さがこんなところでも発揮されてしまう。
その上で双子はどの男性にも靡かずに、いつも手酷く振っている。
彼女達はいつもこう言う……
「デイジー姉様の素晴らしさが分からない男なんて願い下げ!」
「未来の義兄(にい)様は、デイジー姉様と同じくらい完璧でなくては!……あんな芋達じゃなくって」
過分すぎる評価だけど妹達はどうやら本気のようで、デイジーは嬉しいやら戸惑うやらだ。
いつまでもチビで目立たない姉をこんなに慕ってくれるなんてと嬉しく思っている。
両親には期待するなと言ってたが、妹達を大事に思えばこそ、王宮勤め兼婚活は頑張らなくてはならない。
自分と違って男性に非常にモテる妹達。
家の為の条件ではなく、心から生涯を共にしたいと思う男性と結婚してもらいたい。
デイジーの婚活がうまく行けば家を継ぐのはデイジーの夫になるので、妹達は自由でいられるはず。
デイジーの目立たない能力には利点がある。
人から嫌われにくい事だ。
恋愛の対象になりにくいのと同様に、憎悪の対象にもならないのだ。
だから、姫君がもし難しい人であっても、そんなに嫌われることも無いだろう……無いと願いたい。
そんな訳で行ってきます。
王宮、ベアトリーチェ姫の宮殿。
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