第22話 前世からの刺客

「音ノ葉スミレ、享年25。

 そうでしょう?」


なんでこいつが私の名前を・・・。


「あ、あんた、いったい誰!?」


神の差し金か?


なんなんだ!?


「うーん、もう男はあらかた私に夢中だし、バラしちゃってもいっか。」


ツバサは続ける。


「私、コホン、もとい、俺はなあ。

 刹那だよ、刹那。

 覚えてるだろ?

 当然だよなあ。

 お前が殺した相手だもんなあ。」


刹那!?


私が前世で殺してしまったホストの源氏名だ。


え、こいつもここに転生してきたっていうの!?


「俺の本名は翼。

 だからこっちの世界でもツバサに転移したってわけよ。

 同じ名前のやつにしか転移できないらしいからなあ。」


「な、な、なんであんたがここにいるのよ!」


「ああ。

 前世ではハーレムを楽しんだ。

 だから来世では逆ハーレムを楽しみたいって神に言ったらここに来たんだ。

 で、そのときに神に教えられたよ。

 お前を殺したスミレと同じ異世界に飛ばすってな。

 転移後にスミレって名前を聞いてビビット来たぜ、ああ、こいつ、音ノ葉スミレだ、ってな。」


神め、刹那に余計な情報を与えたなあ。


「なんで転生してまで私に突っかかってくんのよ!」


「当たり前だろ、俺を殺したやつを不幸に陥れたいって感情はよお。

 お前の逆ハーレム作戦をぶち壊して、俺がその座を奪う。

 それでこそ、前世の俺自身のかたき討ちってもんだ。」


「あ、あんた、男とエッチしといて楽しいワケ!?」


私は動揺して変なことを聞いてしまう。


「あ?

 別に。

 気持ちいな、女の体でのセックスは。

 男とは違う快感があるぜ。

 まあ、感情も女っぽくなってっから、男とのセックスも悪くはねえな。

 はっはっはっは。」


「わ、私の黒崎仁を返して!」


「ああ、お前が一番お熱だったあのイケメン俳優か?

 返すわけねえだろ。

 俺はな、お前が最も嫌がることをするぜ?」


刹那、なんて下劣なやつ・・・。


私がやつの恨みを買ったせいでもあるけれど、やり方が姑息で汚い。


---


それから月日は流れ、刹那もといツバサにも募集した男性陣がそろった。


それからというもの、ツバサの行動はエスカレートしていった。


常に大浴場にいるのではないかというほどのセックス三昧だ。


無論、桐生くんや神崎くん、如月くん、黒崎仁も餌食となっている。


そんな中、とうとう黒崎仁が私の部屋にやってきた。


「すまない、スミレ。

 俺が間違えていた。

 ツバサはもはや俺の知るツバサではなくなった。」


やっぱり、さすがに病気後のツバサの人格はクズ男刹那の人格だから、違和感を覚えるのも当然ね。


私は、ツバサの人格が入れ替わっていることを説明することにした。


もちろん、私が転生者であることは伏せるけどね。


「実はね、信じられないと思うけど・・・。

 ツバサの中身は、ある男にすり替わっているの!

 その男はクズでどうしようもないやつ。

 女である私を排除して、世界の男を牛耳ってやろうともくろんでいるのよ!」


私は必死に訴えた。


信じてもらえるかどうかはわからない。


でも、いまの私にできることは、彼に訴えることしかない。


すると、彼は驚いた様子で口を開いた。


「ま、まさかな・・・。

 でも、そうでも言わないとつじつまが合わないほどに、彼女の人格は破綻している・・・。」


「そうよ。

 あんたはね、見知らぬ男とエッチしたってことなのよ!」


「なっ!

 1回だけだ。1回だけ誘われてつい流れでやってしまった。

 だが、後悔している。

 あんな状態の彼女としたって、なにもうれしくはなかったんだ。」


ふん、まあいいわ。


ツバサがとんでもないやつってのは理解してくれたみたい。


私はこの問題の解決策を考える。


うーん、ツバサさんの中にいる刹那を追い出せればいいんだけどなあ。


神様なら何か知ってるかもしれない。


でも、どうやってもう一度神様に会えるんだろう・・・。


私たちは袋小路にはまり、いったん解散した。


そうして私は眠りに落ちた。


---


「やあ、スミレ。」


聞き覚えのある声・・・。


「だれ?」


「神だよ、神。」


白い空間に白いモヤ。


神だ。


「僕に聞きたいこと、あるんだろう?」


そうだ、私は神に聞きたいことがある。


「ツバサの中から刹那を追い出せないかしら?」


「可能だよ。」


神はあっさり答えた。


「え、可能なの!?

 どうやるの?」


「彼の目的を達成させるんだ。

 彼の目的はなんて聞いているかな?」


「逆ハーレムって聞いているわ。」


「実は違うんだ。

 彼の本当の狙いは、スミレへの復讐。

 彼の中では逆ハーレムはあくまで手段。

 彼は逆ハーレムを築くことで、スミレから優れた男性を取り上げたいんだ。

 だからね、復讐心を満たしてあげればいい。」


「復讐心を満たすって言われても・・・。」


「簡単さ。

 ツバサを岡部雅臣、大葉蓮、黒崎仁に抱かせる。

 そうすれば、君の男をすべて奪ったことになる。」


えー、全員寝取られるの?

嫌だなあ。


「スミレ、いやかもしれないけれど、これをすれば、ツバサの中の刹那は成仏するよ。」


成仏?


「ちょっと待って。

 じゃあ、私は逆ハーレムを築いたら成仏しちゃうわけ!?」


「いや、スミレの本当の願望は、たくさんの愛を受けること。

 それは、スミレの中では、たくさんの夫や子供たちに看取られること。

 つまり、君が死ぬときに、たくさんの家族が君の周りにいることで君ははじめて成仏できるんだ。

 あの時は説明を省いちゃってごめんね。」


けっこう大事な説明なんですけど・・・。


じゃあ、私は死んで初めて成仏できるのね。


神は続ける。


「話は戻るけど。

 岡部、黒崎、大葉とツバサをエッチさせ、ツバサが満足するように仕向けるんだ。

 いいね?」


「わ、わかったわ。」


私は納得していないが、そう言うしかなかった。


そして、私は目を覚ました・・・。

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