第15話 旅行1日目

旅行1日目。


1日目はプライベートビーチでのマリンスポーツだ。


私、そんな運動得意じゃないからなあ。


少し憂鬱だ。


まず私たちは、用意された水着に着替えることとなった。


けっこう際どいビキニだ。


かわいいんだけど、もっとこう、レースとかで胸元を隠してほしかった。


これじゃ、胸の形がまるわかりすぎるし、これ着てテレビに出たくないんですけど・・・。


まあでも、衣装はこれしかないから着るしかない。


「わーお。」


ビキニ姿で登場した私を男性陣がジロジロ見てくる。


恥ずかしい・・・。


「そんなジロジロ見ないで!

 もうタオルで隠す!」


私はあまりの恥ずかしさに、水着をタオルで隠した。


「できるだけタオルは無しでお願いしますよ、一応、テレビなので!」


スタッフに注意されてしまった。


まあ、この旅行自体、見せ物なんだから仕方ないかあ。


私は旅行に来たことを少し後悔した。




さて、私たちはプライベートビーチにやってきた。


宿泊先のすぐ目の前だ。


まずはビーチバレー。


でも、これはすぐに終わった。


スタッフから、スポーツを変えようと指示が来たのだ。


なぜって、みんな背が高すぎて、私、置いてけぼりなんだもの。


一応、私はこの番組の主役だし、主役が楽しんでないとだめみたい。


ということで、お次はビーチフラッグ。


当然、私が一番足が遅いから、スタート位置にハンデをもらった。


全員がスタート位置につく。


審判はエドガー。


「よーい、ドン!でございます。」


エドガーの独特な掛け声でスタート!


ハンデのおかげで、わりといい勝負!


後ろから私を猛追する足音がする。


私は後ろは気にせず、フラッグにダイブ!!!


どてーーーーーん!!!


っいったーーーい!


たぶん、後ろから来た人と衝突したんだ。


私は目を開ける。


ビーチフラッグは私の手の中にある。


でも、いろいろおかしい。


そう、私の全身に男たちが群がっているのだ!!!


私の左ほほに如月くんが、右ほほに神崎くんがキス!


私の左胸を桐生くんが、右胸を岡部さんがわしづかみ!


私の股間に黒崎仁の顔面が!


「な、な、なにしてんのよーーー!

 このへんたーーーーい!!!」


私は1人ずつにビンタをお見舞い。


桐生くんがとっさに言う。


「いってー。

 わざとじゃないんだよー。」


わざとじゃなしにこんな偶然が起こってたまるか!


岡部さんが冷静に言う。


「でも、奇跡って起こるもんだな。

 この確率を統計学的に計算したい・・・。」


なにが統計学的によ!


このむっつりインテリ!


すると、ディレクターが口をはさむ。


「いやあ、みなさん、ナイスですよ!

 こりゃあ、いい取れ高だ。

 そんな感じで頼むよ!」


そんな感じってなによ。


エッチなハプニングがお気に召すみたいね。


テレビってほんと・・・嫌になっちゃうわ。


そんな出来事もありつつ、お次は海水浴。


私は浮き輪でプカプカのんびりしていた。


みんなもスポーツで疲れたのか、のんびりだべっている。


すると、


チカッ!!!


いたっ! なに!?


突然足がしびれる。


「やばい!

 何かに刺された!

 足がしびれる!」


私は周囲に助けを求める。


すると、岡部さんがすぐに私を浜にあげてくれた。


「これは、クラゲだ。

 まだ毒針が刺さっているかもしれない。

 どこだ?」


そう言うと、岡部さんは私の股をがっと広げた。


「きゃーーー!

 ちょ、ちょっとーーー!」


私は思わず叫んでしまった。


「ちょ、スミレさん!

 僕は真面目に君を助けようとしているんだ。

 落ち着いてくれ!」


私はなんとか落ち着くも、私の股を至近距離でゆっくり見渡す岡部さん。


恥ずかしくてたまらない。


「ここだな!

 見つけた、今から抜くよ?」


岡部さんは私のお股の際どい箇所を指さす。


「え、ええええ!」


「おりゃあああああ!」


「あああああ!!!」


「よし、抜いた。

 あとは、冷やして安静にして。

 それから病院へ行こう。」


すごい的確な処置・・・。


彼のまっすぐに私を助けようとしてくれた横顔が美しい。


「すごい!

 ありがとう、岡部さん!」


「いやあ、一応、医師免許持ってるからね。

 これくらい、朝飯前さ。

 スミレさんは、僕が守る!」


かっこいい。


なんてかっこいいの、岡部さん!


「っくぅぅうーーーー!

 今の、ナイスですよ!

 岡部くん!

 いい取れ高ゲット!」


またしてもディレクターが割って入ってきた。


「っちぇ、岡部さん、一歩リードかな?」


神崎くんが言った。


たしかに、今の出来事で岡部さんの株は急上昇。


「まだまだこれから!

 諦めない諦めない!」


如月くんも気合が入っている様子。


一方の黒崎仁は素知らぬ顔。


こんな出来事があったのに、なんでそんな興味なさそうにできるのよ。


私は少し機嫌を損ねた。


それから私は病院へ行き、診察を受けた。


そんなに大したことはなく、薬を処方されて終わった。


そして、もう日も暮れるころ、夕飯づくりが開始となった。


今日はみんなでカレーを作るみたい。


なんだか、小学生の頃を思い出す。


野外活動かなにかで、なにかと作るのはなぜかカレーと決まっている。


岡部さんはお菓子作りもできるし、まあ料理もそつなくこなしてる。


でも、如月くんはなんだか危なっかしい。

ボンボンだから、自分で料理することないのかな?


ちなみに私は見ているだけ。


男性陣が私のために頑張って作ってくれるみたい。


野菜は切り終わった。


あとは煮込みと味付け。


ここで、桐生くんがいらんことを言い出す。


「味付けは如月に任せようぜ!

 どうなるかは、食べてからのお楽しみ!

 どうよ、面白そうじゃね?」


みんな苦悶の表情・・・。


如月くんだけ料理慣れしてないのは、包丁さばきからみんな察していた。


そりゃ、自分達が食べるカレーをめちゃめちゃにされたくはない。


「いやあ、いいじゃないいいじゃない。

 その提案、ナイスですよ!

 如月くん!

 がんばって!」


ディレクターがいらんフォローをする。


みんなディレクターには逆らえない。


結局、如月くんが1人で煮込みと味付けをすることになった。


「みんな、あんまり期待しないでくれよ。」


如月くんがそう言うと、みんな生唾を飲んだ・・・。


しばらくすると、如月くんの声が。


「みんなー、お待たせ、できたよー。」


すると、みんなのもとにカレーが並べられた。


見た目はいい。


まったく問題ない。


問題は味!


「いただきます!」


私は如月カレーを口にした。


んんんんんん!!!!


うますぎる!!!


なにこれ!?


カレーのスパイスが複雑に絡み合い、絶妙なバランスで調和している。


如月くん、どういうこと!?


「如月!

 なんでこんなにうめえんだ!」


思わず桐生くんが口にする。


彼は如月くんの激マズカレーを期待していたのだ。


「僕、いつも高級な料理ばかり食べてるからね。

 味付けはシェフから聞いたりしていて得意なんだ。」


たしかに。


高級なお店って、スタッフの人がすごい料理の説明してくれる。


それで学んだっていうこと!?


「如月くん!

 ナイスですよ!

 君はいい意味で期待を裏切った!

 素晴らしい取れ高です!

 如月くんの株も上昇ですなあ!」


イケメン、高学歴、プロ演奏家、財閥御曹司、味付け上手 ← NEW


如月くん、すごい!


如月くんと一緒に料理したりするの楽しいんだろうなあ。


こうして、1日目は終了した。

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