第7話 桐生くん

『名前 桐生 悠真(きりゅう ゆうま)

 年齢 21

 身長 182cm

 職業 プロ格闘家、パーソナルトレーナー

 特技 ボクシング 柔術

 経歴 ボクシングライト級世界王者

 その他 父親が桐生組組長』


今日は桐生くんをセレクションした。


初日、全裸でシャワーを浴びていた人だ。


すごい筋肉で思わず見とれた。


でもちょっと怖いかも。


父親ヤクザだし・・・。


「ちわっす、桐生っていいます。

 よろしく!」


「よろしく、スミレです。」


ドレッドヘアをポニテにしてる・・・。


いざ近くに来ると威圧感あってやっぱりこわいかも。


すると、桐生くんが握手を求めてきたので、こちらも握手をした。


ん? よく見たら、薬指が無い!?


え!?


薬指なし × ヤクザの息子 = 元ヤクザ


ってこと!?


「え? 薬指どうしたの?」


聞いちゃまずかったかな?


「ああ、ヤクザを抜けたときにね・・・。

 ってへ。」


ってへ。じゃないわ!


すると、彼がすかさず訂正する。


「ってジョーダン!

 冗談だよ。

 これは事故でなくしたの!

 俺は父親がヤクザなだけで、俺自身はヤクザとはまったく関係ないから安心して!」


なんだー、安心。


「事故って?」


「ああ、近所の小学生が車にひかれそうになってね。

 とっさにかばったら、こうなっちゃったってワケ。

 まあガキは助かったからいいんだけどさ。」


え、意外にいいやつじゃん。

ギャップ萌えとはこのこと?

キュンキュンが止まらないんですけどー!


「意外にいい人なんだね。」


「意外は余計!

 ははは!」


「ってかさ、スミレちゃん。

 運命の赤い糸って信じる?」


赤い糸? 急になに?

まあ、私そういうの好きだし、信じるかも。


「ま、まあね。」


「おっ! 俺も信じてるんだよね。

 実はね、俺とスミレちゃん、赤い糸で繋がってるんだよね。

 だってさ、俺、薬指ないもん。

 小指に赤い糸が巻かれやすいの!

 スミレちゃんと結ばれるために俺、事故ったんだと思う!」


なにそれ、笑える!


こじつけも甚だしいけど、面白いブラックジョーク。


・・・でも、これは絶対に彼の口説き文句、必殺技ね。


私は騙されないわ!


「絶対その文句使い慣れてるじゃーん!」


「あ、バレた?

 さすがスミレちゃん、目ざといねー!」


さっきから『ちゃん』付けやめい!

イカツイ人からの『ちゃん』付けは私に効く!


「そういえば桐生君、パーソナルトレーナーなんでしょ?」


「ああ、そうだよ。」


「私も筋トレしてるからさ、なにか共通点あるかなあって思って。」


私からも話題を振ってみた。


「なるほどね、そうだ!

 今からプチパーソナルトレーニングしよっか!

 スミレちゃんのフォームを見てあげるよ!」


「いいね、見てほしいかも!」


たしかにありがたい。

プロの目線から見て、改善点を見つけてほしい。


「じゃあ、腹筋してみよっか。」


私は自分のフォームで腹筋をしてみた。


すると、桐生くんが私の腹筋に手を当て、「ここ、効いてる?」と質問してくる。


彼の指が私のおなかに触れた瞬間、全身が緊張で硬直した。


これはただのトレーニングの一環だと分かっているのに、心臓が早鐘のように打ち始める。


え? イケメンとの筋トレってこんな楽しいの?


筋トレって、辛いものだと思ってた。


でも彼となら楽しくやれる。


私の筋トレ、ずっと彼にパーソナルされたい・・・。


ただ彼の指が一度だけおなかに触れただけなのに、そんな感覚に陥った。


そして、彼が私の太ももの後ろあたりを軽く支えるように持った。


そこ、やばい。


もはやそこは太ももなのかおしりなのかは誰にもわからない。


彼は私のお知りに触れているの?


やだ、なんかすごく恥ずかしくて、気持ちいい。


これはただのトレーニングなのに、勝手に興奮してる私ってなに?


変態なの?


私、そんなに溜まってた?


私は、私自身の感情の高ぶりに動揺していた。


頭がぐるぐるする中、彼とのパーソナルトレーニングはいつの間にか終わりを迎えた。


まだ頭がホワホワしている。


こんなに楽しいのに、なんだか疲れちゃった・・・。


「さ、さすがはプロね。」


私はいまだに動揺する中、何とか感想を絞り出した。


「いやいや。

 なかなか上手だったよ、スミレちゃん。」


なんだか褒めてくれた。


私はただ独りでホワホワしていただけなのに。


ていうか、冷静になって、私、この人の裸を見ているんだった。


私はパーソナルトレーニングしていた彼と裸の彼を頭で重ねてしまう。


あ、やばい。


いま、濡れたかも。


またパンツ洗わないとだあ・・・。


うーん、溜まってるのかな私。


でも、部屋には監視カメラあるし・・・。


バスルームで一回独りでしたほうがいいかもなあ。


とか下品なことを考えていると、桐生くんが声をかけてくる。


「スミレちゃん!

 あのさ、俺の親父の件、気にしてないかな?

 やっぱり気にしてるよね?」


私は下品なことを考えていたというのに、この好青年は真面目な質問をしてきた。


「気にしてない!と言ったら嘘になるかなー・・・。」


「あのさ、真面目な話。

 たしかに、貴重な君の赤ちゃんに俺のヤクザの遺伝子はあまり良くないかもしれない。

 でもさ、俺、ヤクザと一切関係持たなかったし、俺の子どももそうやってまっすぐ育てられる自信もある!

 だからさ、そのう、うまくまとまらないんだけど。

 ヤクザとか関係なしに、俺のこと、純粋にアリかナシかで決めてほしい!と思ってる。」


すごくまっすぐな目。


本当に真面目な子なんだなと思った。


ヤクザのことちょっと気にしてた自分が恥ずかしくなるくらい、彼は堂々と言いきった。


私は素直に彼のことを尊敬した。


「わかった。

 私も、桐生くんのことだけ見るようにするよ!」


「ありがとう。

 さすがは俺が見込んだ女性だ!」


まっすぐに恥ずかしいことを言ってくる。


でも、そこにしびれてしまう自分がいる。


コンコンっ!


「失礼します。

 そろそろお時間でございます、桐生殿。

 他にも候補の男性がいらっしゃいますからな。

 ご承知くだされ。」


「はーい。

 じゃっ、スミレちゃん。

 当然だけど、俺、本気だから。

 また、機会があれば話そうな!」


そう言って、彼はセレクションルームから去って行った。


イカツイ見た目に反して、とても真面目で素敵な子だった。


さて、帰ってパンツを洗わねば・・・。



<<作者あとがき>>


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