第2話 召喚された理由

 俺、榊拍斗が追放を言い渡され、謁見の間を去ってから……数十分後。


「何処だここ?」


 迷子になっていた。


 まぁ当然だ。ここは異世界でしかも城の中、ガイドもなしで自力で出口に行ける訳がない。


「しまったな、せめて出口の行き方ぐらい聞いとけばよかった」


 頭を掻きながら後悔していると、前方に甲冑を着た二人の男が歩いていた。おそらく巡回中の兵士だろう。


「あのーすいません、此処から出たいんですけど出口ってどこですかね?」

「ん?誰だお前は!」


速攻疑われた。まぁ見知らぬ人と巡回中に会ったらこうなるか。

 

「あーあの、異世界から召喚された者なんだけど」

「召喚された勇者様方は今頃歓迎のパーティーに出席されている。会場から離れているこんな所にいる筈がない!!」

「えー」


 更に疑いが深まった。てかアイツら今頃パーティーしてんのか、どうでもいいけど。


「あーその、別に変な事企ててなんかいないし。この城を出られたらそれでいいんだけれども」

「ならん!貴様は捕らえて牢屋に向かって貰う!!」


 まるで聞く耳を持ってくれない、いやまぁ仕事としては正しいし、俺が怪しいのも確かなんだけどさ。


「はぁ…。もういいや」


 そう言って俺は気怠げに指を鳴らした。


 ――瞬間、世界がブレる。


「な!?き……消えた!!?」

「い、いったい何処へ!?」

「お前は応援を呼んでこい!必ず見つけ出すぞ!!」

「はい!」


 そんな喧騒をから聞きながら、俺は歩き出す。


「仕方ない。自力で探すか」



 ――――――――――――――――――――――――



 あれから行き止まりにあたること3回、兵士に見つかりトラブルが起きかけること5回、前に通った道に戻ること2回、1時間近くかけてようやく出口に辿り着いた。


「やっと脱出……と、思ったんだけどな」

「……漸く来ましたか」


 王女様が兵士達と待ち構えていた。


「漸く、ええ本当に漸く来ましたか。待っていましたよ……。此処から謁見の間は最短で数分で来れるのでもう城から去ったと思いましたが、兵士から城に現れた不審者の報告を受け、もしやと思い迅速に出口を固めました。まぁ……貴方が来たのはその40分程後でしたが」

「なんか……ごめんね?」


 別に方向音痴って訳じゃないんだけど、やっぱ城ってだけあってめちゃくちゃ広かったから。


「さぁ、一緒に皆さんの元に戻りましょう」

「俺を追放したのは君の父親の筈だけど?」


 現王女の父親、つまりは国王。この国のトップだ。

 しかもあの荒れ具合からすると、そう簡単に追放を撤回するとは思えない。


「父は私が説得します。元々今回の召喚については私に任されていました」

「そうかい。ま、俺に戻る気はないけど」

「な、何故ですか!?」

「あんたらが俺たちを召喚した理由」

「ッ?」


 彼らがなぜ異世界から俺たちを召喚したか、その目的は単純に戦力の確保の為だ。


「数年前、突如現れた謎の軍団に龍の国が乗っ取られてしまった。そこは龍と人が共存して暮らしていた世界でも類を見ない国で、災害の化身とされる龍が数多く暮らしている国だった。だが、そのに暮らしていた多くの龍がその謎の軍団に殺され、もしくは従属してしまった。その国を乗っ取った謎の軍団のおさは自らを天王を称し、全世界に宣戦布告。そうして次々と国が滅ぼされる中で、残った国が総力をあげて作り上げたのが、異世界から人間を召喚する魔術。この世界にも多くの強者がいるがまだ足りない。莫大なコストは掛かるが背に腹は変えられない。こうして断腸の思いで召喚されたのが俺たちで、その俺たちの役割は要約すると、つまり、その謎の軍団からって事だろう?」


「……ええ、その通りです。ですから皆様には万全のサポートを」

「そこが間違ってるんだよ」

「え?」

「まず俺たちの意思を問えよ。世界を救う為に死ぬかもしれない戦場に出る勇気があるか聞けよ。お前らはどこまでも自分達の都合で考えてこっち都合を全て無視してるじゃねぇか」

「そ、それは……」


「お前らが俺たちの都合を無視するのならこっちだってお前らの都合を考慮しない。一応俺の意思を言っておくぞ。『世界なんて、好きでもない奴が救おうとするもんじゃない』これが俺の意思だ。わかったら早くそこを退け」


 そもそもこの世界と無関係の俺たちがなぜこの世界を救うなんて大役を担わなきゃならない。そんな目にあって喜ぶのは余程の英雄願望を持った奴だけだ。

 


「ど、退きません」

「……」

「たとえ貴方が我々を嫌っていたとしても、貴方を此処から出すわけにはいきません」

「なんで?」

「責任があるからです。貴方達をこの世界に連れて来てしまった責任が」

 

 

 俺はそうじゃない。


 

「この世界には魔獣が存在します。何も知らない貴方が城の外に出てしまえば、きっとそう遠くない内に魔獣と遭遇してしまう」


 

 俺は世界も他人もどうでもいい。究極――


 

「スキルの無い貴方では太刀打ちする事は出来ない!死んでしまうかもしれないのですよ!?」

 


 ――自分の命すらも。



?」

「え?」

「死ぬかもしれないなら、なんなんだ?俺が死ぬとお前らに何か不都合なのか?」

「な……何を言って…」


 うん?なぜか王女が信じられない様な物を見る目でこちらを見てくる。なんなら身体も震えている。

 いや王女だけじゃないな。兵士達もなんでか動揺している。何故に?


「まぁいいや、とにかく俺は此処を出るから」

「ッ!捕らえなさい!!」


 えー、通さないならまだ分かるけどなぜ捕縛する?


「まぁ、いいか」


 言いたい事は言えたし。


「じゃあな」

 


 ――瞬間、世界がブレる。



 もう王女の目に俺の姿はなかった。







――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!!

衝動的かつ突発的に始めてしまい、完全な見切り発車状態ですが、見守っていただけると幸いです。


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レビューもして頂けたら発狂して喜びます。


そしてもう一度、最後まで読んでくださり誠にありがとうございます!!!!

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