第1章 過労死からの転生はありですか?②
ふわふわ、ふわふわ、と意識が浮上する。心地よく寝ていたのに徐々に鮮明になる意識に不快感を示しながら目を擦る。
(あれ……俺何してたっけ……)
記憶を手繰る。何かを頭の中で掴んだ瞬間、フラッシュバックする激しい頭痛と嘔吐による不快感。その感覚を思い出して、俺はバッ、と勢いよく起き上がった。
「……?どこだ、ここ……?」
首を傾げる。部屋を見ると、そこは俺が倒れる前に居た部屋ではなかった。むき出しだった床には防音マットが敷かれ、部屋の中の棚にはプラレールや恐竜のソフビが入っていた。月明かりが窓から入り込む、その月明かりに誘われるように窓を見れば———。
「は……?」
そこに映った俺は、……子供の姿をしていた。
「は?」
現実が受け入れられなくて、その窓に向かって手を振ったり、変顔をしたり、自分じゃない動きをすることを期待して動きまくる。でも、どんな動きにも俊敏についてきて———いや、当然だ。この部屋には俺しかいない。俺以外は存在しない。つまり、この窓に映っているのは俺で。
「いや、誰だよ」
窓に近づいて顔をマジマジと見る。年齢は、4歳……いや、5歳と言ったところだろうか。小学生にはまだ上がっていないんじゃないだろうか、という年齢だ。赤茶色……ちょっと明るいかな?という瞳の色に黒髪……標準的な日本人というところだ。
「あー……あー……」
声も普通の子供の声。若干クソガキ感を感じるのは何故だろうか。……改めて手を握っては開くを繰り返しながら掌を凝視する。
「これは所謂……」
トリップ……?いや、転生なのだろうか。これはまず確認しなければいけないことが大量にあるな、そんなことを確信しながら俺はベッドに戻る。
「……とりあえず寝よう」
もしかしたら、明日になったら元の体に戻っているかもしれない、これは夢なのかもしれない、そんな淡い期待を込めて、俺はもう一度意識を落としたのだった。
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