第3話 夢

ぽこんっという聞き馴染みがある音がしてスマホを手に取ると、思った通りストーリーにコメントが付いた通知が来ていた。大方更新を見た友達からのメッセージだろうと何気なくその通知をタップして開く。タップして開かれたその通知は全く知らない人からのメッセージだった。


『さがして』


そう一言だけのメッセージとさっき消したはずのブレた写真が一緒に添えられている。背筋がぞわっとして思わずスマホの画面を消してしまう。なおも通知がぽこんぽこんとスマホから鳴り響く音がやけに大きく聞こえる、驚きで冷えてしまった指で通知を確認すると今度は友達からのメッセージが表示される。

いつもの通知に安堵し、さっき見たのはきっと疲れと浮ついた気持ちのせいだということにして友達からの通知を見ると、そこでも誕生日のお祝いの言葉が並ぶ。

いくら探しても先ほどのメッセージはなく、やはり疲れているのだと思い早めに寝ようと思い手短にお風呂済ませベッドへともぐりこむ。しかし昂ってしまった気持ちはなかなか収まらず何度か寝がえりを打ち、ついついスマホに手を伸ばしてしまう。自分でもここまでくると中毒だなとは思いつつも、友達のストーリーを流すように見ていく。それは何気ない日常を切り取って映し出したようで、変わらない光景に安堵し重くなった瞼にあらがうことなく眠りについた。


 ふわふわと浮いているような感覚に目を開けるとそこは真っ暗な場所だった。

正確には真っ暗だが何も見えないわけではなく、暗い夜道を歩いているようななんとなく周りがぼんやりと見える光景だった。

 その感覚に、あぁこれは夢の中なのだと思うと自分の体が勝手に歩き出す。少し歩いた後、何段かの階段をのぼりトンネルのような場所に出る。そしてそのままトンネルを通りぬけまた開けた場所にでる。


『さがして、ぼくをみつけて』


小さな子供のような声が頭の中に直接響くように聞こえ、また私は歩き出す。そちらに行ってはいけないとどこかから警鐘が頭の中に響く。


いやだ、そっちはいや!!


 そう強く願った瞬間、私は声にならない悲鳴をあげベッドから飛び起きた。もう10月だというのに、いやな汗で寝間着はぐっしょりと濡れている、額から伝う汗が顔の周りの髪の毛をべたりと張り付かせている。

 私は乱れた呼吸と整え、どくどくと早鐘を打つ心臓を押さえる。何度か深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、額の汗をぬぐう。ようやく落ち着いた頃に冷えた汗で体が冷え切っていることに気が付く。汗でべたついて気持ちが悪かったのでシャワーを浴びて寝ようと思いベッドから降りる。

 ぽこんっと、また聞き馴染みのある音が自分のスマホから鳴り、一度落ち着きを取り戻した心臓はまた早鐘を打ち始める。完全に冷え切った指先でその通知を恐る恐る確認してみると、また知らない人からのメッセージだった。恐怖が私の心臓をわしづかみにしているような締め付けられる感覚が私を襲う。けど、この通知は開かなくちゃいけないと私の中で何かがそういっていた。あまりの恐怖に数分固まっていたが、心を決めてメッセージをひらく。


『たすけて、ぼくをみつけて』


たったその一言だけのメッセージが、暗い部屋の中でスマホの画面に明るく照らされていた。

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