第3話 入部
「ピコピコンッ!バァン!game over, , ,」
ゲームオーバーという効果音とともに俺は画面を消した。いつもならまだ続けるが、いまいち調子が上がらず気分が乗らない。普段おいしいご飯も、無味な気がする。
「やっぱり、もう一回、今度はしっかりラケットに当てて打ってみたいなぁ。」
自分の部屋に戻ると、そんな独り言が無意識にこぼれ出た。どうやら、今俺の頭の中はテニスの三文字しか浮かんでないらしい。それもそのはず、人生で初めてスポーツで悔しさを感じたのだ。
俺はおもむろにパソコンを開き、テニスについて調べた。
(へぇ、結構選手人口多いんだなぁ。日本人のプロもたくさんいる!)
最初は少しだけ調べるつもりだったが、初心者レッスンなどをyoutubeで見ているうちにどんどん止まらなくなり、気が付けば午前0時を回っていた。
(よし、明日もう一回いってみよう。)
そう心の中で思い、俺は長い一日を終える眠りについた。
翌日、いつものように帰る用意をした俺は、真っ先に一人でテニスコートを目指した。
(二度目だけどやっぱりここだけ雰囲気がほかの場所と違うなぁ。)
コートに着くや否やそんなことを考えていた。コート内に目をやると、如月先輩がいた。
「こんにちは!昨日体験をさせていただいた吉田暖です!」
と、思い切って声をかけてみると、
「おう!また来てくれたのか!どうぞどうぞ、入って。」
と言われたので、俺は元気よく中へ入った。
「吉田君さー、やっぱり昨日のままじゃ終われないっ!と思ってもう一回来ちゃった感じ?」
準備をしていると先輩にそんなことを聞かれたので、俺は素直に答えた。
「はい!初めてスポーツで悔しかったので、今日はちゃんとラケットに当てたいなと思って。」
すると先輩は、
「いいねその心構え!そういう熱い気持ち嫌いじゃないぜ。お前絶対伸びるよ!」
と、言ってくれた。絶対に伸びると、人生で初めて言われた言葉に俺は少しうれしくなり、救われたような気がした。
俺は先輩に、あの後帰ってテニスについて調べたことや動画を見たことを話し、それに応じるように先輩は意見やアドバイスを出してくれて、そののちに俺は再び昨日と同じ場所で構えた。
(今日は絶対に打てる!)
心の中でそう唱えると変に緊張してきた。ボールが来た。俺は自分が学んだことを信じて、一つ一つ確認しながらスイングした。
「パコンッ!」
当たった!威力などは全然ないがとにかくしっかり面に当たった。
「やった!」
あまりの嬉しさと、打った瞬間の気持ちよさに俺は思わず声を上げていた。
「やるじゃん!お前は自分が思ってる以上にすごいやつだよ!よし、合格だ。俺たちと一緒に強くなろうぜ!」
先輩の言葉に俺は目頭が熱くなった。ここまで俺のことを認めてくれた人はおそらく初めてだろう。
「来いよ、テニス部!」
次いで放たれた言葉に、
「はい!よろしくお願いします!」
と思い切り答え、頭を下げた。 俺は家に帰ってどうにかして親を説得し、正式にテニス部に所属することが決まった。
さあ、俺のテニス
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます