第4話 練習開始part1

 「キーンコーンカーンコーン」


 ようやく七限目の授業が終わった。俺は疲れ切った重い腰を上げ、真っ先にラケットバックを背負ってテニスコートへと向かう。やっとこのルーティンにも慣れてきたところだ。


 テニス部に所属して早一か月、俺は以前よりもボールをしっかり面で捉えれるようになり、ラリーも続くようになってきた。


 我ながら恥ずかしいが、ゲームをする間も惜しんで壁打ちをしに行くぐらいなのだから、どうやらかなりハマってしまったらしい。


 しかし、その分放課後の楽しみができたと考えれば悪くはない。


 

 「ちわーす!!」


 俺はいつものようにコートと先輩に向かって元気よく挨拶をすると、


 「お前なんでそんな元気でいられるんだよ~(泣)」


 と、榊原先輩が言ってきた。


 「部活が楽しいからに決まってるっすよー!」


 「いいなぁ、お前はまだ一年で。レギュラー目指してる二年の俺にとっちゃたまったもんじゃねぇよ。」


 それも無理はないか。簡単にこの部について説明すると、コートは全部で4面、レベルが上の人からA・B・C・Dの順で各コート6~10人に分かれており、主に

A・Bコートのメンバーが団体戦のレギュラーとなる。


 この高校は伝統的に強く、昨年のインターハイで団体ベスト4、如月先輩は二年生ながら3位という成績を収めている全国常連の強豪校である。


 その中で、初心者の俺はもちろんDコート、榊原先輩はB入りを目指すCコートなのだ。


 「しかも今日はC・D合同練かよっ!めんどくせーな。」


 「まあまあ、そんなこと言わずに僕たちの指導もお願いしますよ!」


 「ったく、しゃーねーなぁ(笑)」


 そんな感じで今日も練習が始まる。


 まずは軽いアップをした後、手出しからラケット出しの基礎練に入る。地味な練習なのでつまらないと言う人が多いが、俺はそうは思わない。むしろこういう練習のときにこそしっかりとしたフォームの定着ができるため大切にしたい。


 休憩ののち、クロスラリーに入る。今日はCコートの人たちと打てるみたいだ。


 「パァン! シュタッッ! パコン!!」


 「ぷはっ!きちぃ~」


 「こんだけでもうへこたれてんのかよ。そんなんじゃ一生上に上がれねーぞ。」


 「万丈先輩!いやっ、全然平気です!」


 「一年はそうでなくっちゃな。」


 この人は如月先輩に続くNo.2の実力の持ち主、万丈凌駕ばんじょうりょうが先輩だ。見た目はクールで周りをひきつけない風格があるが何かと俺を気にかけてくれる。


 「そうだ、丁度いい。お前今からAコート来い。」


 「えっ!俺がですか!?でも今から形式練なんですけど、、、」


 「強くなりたくねぇの?少なくとも俺にはそう見えたんだけど。」


 「そりゃあ、テニス始めたからにはもちろん強くなりたいですけど。」


 「じゃあ断る理由ないじゃん。ほらっ、早く。」


 「は、はい!!」


 なんだこの展開!?一体何が始まるんだ????

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