第12神話 儀式の準備②
「ひゅーっ…!ひゅーっ…!あぁっ…!!もぉぉっ!!」
ラヴァナが叫んだ。ネガティブな思想に押しつぶされそうになってしまうのを叫ぶことで一時的に掻き消したのだろう。
だが束の間にその恐怖心は私達の心に這い上がってくる。
(くっ、クソっ!ハウワ…!ハウワがいたら…!)
故人となってしまった仲間の名を心の中で叫ぶが当然返事は帰って来ない。
そしてそろそろ半分以上が完成する。
「ふぅッ…!!ふぅぅっ…!!ハッ……!!ハッ…!」
この中で一番体力に自信のあるラヴァナでさえ、もうガタが来ている。
私とマサルに至っては立つのももうやっとな程だ。
そして……
「ヒューっ…!!カッ…ヒュー……ヒュ……!」
私の呼吸は完全にイカれてしまい、地面についに膝をついてしまう。
「「………!!」」「ね、ネヴァ!!」
ラヴァナとマサルの二人の無言で向ける心配の視線が私を痛く刺激し、ラルバからの心配の声が無機質に聞こえる。
もうメンタルも体もボロボロだが微かな意志によって奇跡的にくうかんの能力を使えている。
だが作られるペースは完全に遅くなっていた。
(ま、まずいまずいまずい!このままじゃ…!このままじゃ!)
この時間ラルバは内心ではパニックを起こしてしまい、もう何から手をつければよいのか分からなくなっていた。
ただ中心の自分が動いてしまうとこの魔法陣は消えてなくなってしまう。
不安がもう限界まで溜まってしまっていたその時だった。
パリン!
「…ごめん!遅くなった!」
「…!マガミ!」
ラルバが名を叫んだことで私達三人はやっとその存在に気づいた。
「「「……!!」」」
久しぶりの元の姿での再開に喜ぶべきだろうが、今はそんなことを考えれる余裕なんてなかった。
マガミはすぐに行動に移すため南の位置に瞬間移動をし、能力を使う準備をする。
「よし……いくっぞぉぉぉぉぉぉ!」
その掛け声とともにマガミは。自分の今出せる全力を振り絞る。
「……はぁっ…!す、すごい…!!」
まだ体力に余裕のあるラヴァナが小さな声で感心する。
四人になったことでペースが落ちていた魔法陣の形成が徐々にスピードアップする。
そしてついには四分の三が完成する。もう後はこのペースのまま行くだけだ。
この時ラルバは既に安心しきっていた。
(よ、よし!もうそろそろ完成する!そ……)
ドサっ…!
裂け目を作り出していた中では一度も聞いたことのない音がこの小さな空間に響く。
誰かが倒れたような音が……
あ………
「ね……ネヴ…!!」
ついに彼女の体は限界を迎えてしまい倒れてしまった。
それを見て咄嗟にラルバは動こうとしたが動けないことをギリギリで思いだし、踏みとどまった。
(ネヴァが……!どうにかして助け……!)
ラヴァナがその姿を見て動き出そうとはしたが、マガミとマサルはその中でもただまっすぐ魔法陣を作っている姿を見せる。
(……あぁぁもう!!あいつを信じろってんでしょ!?)
今は魔法陣を作ることを第一にしてラヴァナ達は作ることを選んだ。
また、同時点ラルバは心の中で嘆いていた。
(ど、どうするどうするどうする!?この場での最適解って一体何だ…?ウラさんならどうする?)
この状況では無力でしかないのが悔しさで心を埋める。
いや、もうそれを許容する心の容量も限界をむかえ焦ることしか出来ない木偶の坊になってしまっている。
だがそんな中マガミはラルバの姿を見て、決意する。
「はぁッ……!はぁっ!!」
残りの力を振り絞るように、能力の出力を最大にする。
勿論その姿をラルバやマサル達が見逃さない訳がなかった。
「なっ……お前何やって……」
ラルバの言葉には目もくれずただ限界値まで上げる。
「や、やめろ!お前…!まだ疲労が完全に取れてないんだろ!?その勢いじゃぶっ倒れるぞ!?」
「そ、そんなもの関係ないよ……ハァッ…ハァッ…」
明らかに早いガタが来ている。もしかしたらネヴァよりも酷い状態になってしまうかもしれないのに。
「………自分の思う信念や道徳があるならばそれを軸にして生きろ…!そしてその考えを貫いてこそ生きるべくして生きる者へと成る…!!」
(……!!)
確かウラさんがいつの日か言っていた言葉だ。
「ましてその信念や道徳を貫き…!ハァッ…!生き抜こうとするものを信用出来ないのは…!ハァッ…その者だけでなく自分自身への冒涜だ…!ハァッ…!」
そう息切れを混じえながら、ウランの教訓を声に出して言う。
その迫力はウラさんにも引けを取らないものだった。
「ラストスパート…!!」
そう言いながら、マガミが主体となって出力を最大まで上げる。
私達も今の言葉を心に宿し、力を振り絞る。
「ぐおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
そしてついに……
パリンッ!
魔法陣は完成し、その魔法陣は完成すると同時に地面に沈み込んでいって消えた。完成だ。
「っはぁッ…!ハァッ!!」「ハァッ……ハァッ……」「ハッ……ハッ……ハッ……」
そして三人は作り終わると疲労によって地面に倒れ伏す。
「うっ……」
「お、お前等……!」
ラルバはこの状況を見てすぐに状態異常を治す為の薬を用意し、それぞれに飲ませる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます