第9神話 人間①
「っあぁぁぁぁぁ!!!!」
叫び声が広くオブジェクトも何も無い空間の中に響き渡る。
(痛い…!痛い‥!熱いぃ!!)
先程の足の痛みに加えて5本の鋭利な爪が深い爪痕を残す。
間違いなく止血が間に合ったとしてもその頃にはもうこの世にはいないだろう。
あまりの痛さに俺は吐き気を催した。
(や、やばい!!吐く…!!!)
そうして腹の中にあったものを全て吐ききると思ったが、口から出てきたのは鮮血だった。大量に地面に吐き、血溜まりが出来てしまった。
「ウオオオオオオオォォォォォ!」
大きな遠吠えを上げながら、また俺に攻撃しようとする。本当にやばい。
そして大きな爪をまた振るう。
「あぁぁぁ!クソ!」
その瞬間にキメラ側の人が裂け目を使用して一瞬で目の前に現れ、俺を抱えた。
「おい!おい!大丈夫か!(あぁぁ!クソ!こんなことなら止血するなんて周りくどいことを考えるんじゃ無かった…!せめて亜空間を横着せずに時間をかけて使うべきだった…!)」
意識が朦朧とし、目の前が揺れる。キメラ側の人が何かを言っているが、音がエコーが掛かっているように聞こえていた為よく分からなかった。
その合間にもマガミは攻撃を仕掛けてくる。
「すまない!人間もうすぐで出来る!」
また何か言っているが、何も耳に残らず何処かへ飛んでいく。
「ガァッ!」
その隙を見逃すマガミでは無く、キメラ側の人に向けて鋭い牙で咬みつこうとする。
「うぉっ!」
キメラ側の人は焦りの表情を見せながらも、軽々と攻撃を避ける。
パリィ!
マガミは連続して爪や牙を振るい、裂け目を展開しながらキメラ側の人間を裂け目で自分の目の前に転送するが、キメラ側の人はその瞬間に裂け目を発生させて回避をする。
「ふぅ、危な……は?」
今度は転移した先にはマガミがいた。
(さっきと同じだ。何故俺の位置が的確に分かるんだ?まさか未来予知を手に入れたのか?)
(…いやそもそも未来予知は時に関わる能力……未来予知が使えるなら時を止めて攻撃を加えるなんてことも出来るはずだ。だが、こいつは使っていない。じゃあ何だ?)
「グァァァッッ!!」
そんな考える際にもマガミは容赦なく襲いかかってくる。
パリイ!
また空間の裂け目を発動させて避けるが、その避けた先にもまたマガミがいた。そこからはイタチごっこのようにキメラ側の人は避け続け、マガミはただ攻撃を振るう。
(マサルとラヴァナがこの場に居ないってことはマガミに間違いなくやられてるはずだ!あいつらがこいつを放っておく筈がない!)
ただここで一つ気になることがあった。
(だったらネヴァも来てないのは何でだ?呼んでみ……)
その暇を与えないように、マガミはキメラに向けて攻撃を続ける。
「グァァァァァァラァァァァ!!」
(くっ!呼びかけようとさせる時間までくれないのかよ…ネヴァまでこいつにやられたのか!?あっちから呼び掛けることも無いってことは、あいつまでやられたのか?こいつ…!どんだけパワーアップしてしてんだ!?あぁぁぁどうする!?どうする!?)
いくら精神と肉体を外の自分と体内の異空間の中の自分を半分に分けて弱体化をしているとしても、マガミの攻撃なんてものは軽々と避けれる……筈なのだが……
「っ危ねえ!(いくら何でも動きが早い…!しかも何だ!?こいつの先読みの正確性は!?さっきから一度も俺の移動する場所を間違えない!やっぱりこの人間が関わっているのか……?このオーラは……)」
そんなことを人間を抱えたりしながら考えつつも、ラルバは亜空間の準備が完全に終わった。
「…よし!そろそろだ!」
パリパリパリパリ!
広範囲に空間が割れていき、剥がれ落ちていきそこに新たな空間を創り出した。その空間の中は透明で、空間内には何も無い。マガミはその透明な空間に飲み込まれた。
「ぐぅるぁぁあぁぁ!」
マガミは俺達に向かってこようとするが目に見えない壁にぶつかり、余程の勢いでぶつかったのか、ぶつかった後、数秒はその場から動くことが出来ていなかった。
「〜〜〜〜〜〜!?」
「よし今の内だ!この範囲を半分の力で使うのは初めてだったが……。すまない人間。時間が掛かったが、回復薬を使う。」
そういって亜空間内に小さな裂け目を発生させ、その中から、コルクで栓をされているフラスコを取り出し、人間の足と腹部に掛ける。
(な、何を…)
するとマガミに付けられた傷が一瞬で修復していき、切断された足も新たに生えてきた。
「あれ……足が…生えて?え?足?」
痛みがいつの間にか無いことに気付いた。
足が生えようとグニュンと形成されていく姿がグロテスクで思わず叫んでしまった。
「う、うわぁぁぁぁ!!なんだこれぇぇぇぇ!」
「落ち着け!ただお前の体を治療しているだけだ。あと10秒もすれば完治する!」
「え…?」
キメラ側の人に言われるがままに、自分の足を見てみる。
すると傷が塞がれていることに気付き、治っていく自分の足をまじまじと見てしまった。
「よし、治ったか。」
「ほ、ほんとに治った……」
俺は自分の足を動かしてみると本当にしっかりと動く。
自分の身に起きたことが本当に信じれず、何度も足を触ってしまった。
そんな中でマガミのことが頭に浮かび血相を変えて、真っ先にキメラ側の人に目を向ける。
「そ、そんなことより、あの空間は何ですか!?」
「亜空間といって俺達が今居る空間とこの空間とは隔絶された空間を創った。だからあいつがこの空間に転移しない限り、俺達は攻撃を受けること何てない。この隙にネヴァ達に………」
最後の方は声が小さくて、発言が聞き取れなかった。ただその前の発言に少し引っ掛かる部分があった。
「ん?あの人も空間を操れるんですよね?ここの空間内に裂け目を使うことも……。」
この時俺はフラグを建てるような台詞を吐いた。
その直後に前方から物凄い殺意を感じた。そう、マガミが立ち上がっていたのだ。
「ひっ……!」
パリイ!!
その音と共に、俺は背後を振り向くとそこにはマガミが居た。予想通りに空間の裂け目から出てくる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!」
「ぐるぁ!!!」
「…アブね!」
キメラ側の人は素早く俺を抱えて裂け目を展開して避けたが、またマガミがそこに居た。
しかも転移する間を与えないように先を読んで俺達が転移し、裂け目から出て来るタイミングで既に攻撃を始めていた。
「ゴァァァァァァァァァ!!!」
(し、死ぬ……!)
俺は咄嗟の一瞬だけ目を瞑り覚悟を決めることしか出来なかった。
「………………!!!」
…だが、暫くしてもマガミの攻撃が来ることは無かった。自分が気づかない間にマガミに殺されたのか?キメラが亜空間というものを展開出来なかった?
俺は勇気を振り絞って、片目を少しずつ開けた。
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