第7神話(前書き)   謎の青年

ーー一神とキメラside


「お前!あいつらを人質にする必要なんて無いだろ!」


(ウラさん……代わってくれ。)


「……済まない。ラルバの奴がお前と話がしたいと言っている。」


 そう言うと、くうかんの神の先程よりも鋭い目つきが少しだけ柔らかくなる。


「……人間か。」


 柔らかい目つきにはなったものの、優しさとかのものは全く宿っておらず、恨みや怒りなんて言葉だけじゃ表せないものだった。


「……お前たち神は今まで最強能力を使って欲望を満たすことばかりだろうがよ…!人間なんてなんとも思ってないが人質は嫌だだ?」


「………」


 この言葉に否定することはできなかった。

 俺達神が与え、奪い、積み上げてきた。

 この罪は他の神でももう拭えることはない。


「だから俺も神の力を使って本当の神とは何たるかを示す為の踏み台になって、俺の欲望を満たしてくれよ。あの人間達の夢は守ってくれるのに、俺は守らないなんて言わないだろうな?」


 先程の神の声とは打って変わり、少しだけ若い青年の声へと変化する。

 罪は拭えないかもしれない。だけど……


「何でお前等は力ずくばっかりで解決しようとするんだよ!!力が必要なら手伝うのにっ……!」


 俺は紛れもない本心で、真剣な眼差しを向ける。


「…………(けど…確かにこいつなら……)」


 ラルバは今まであったことを思い返す。

 

(本当のあるべき姿の神というものを語っていた……それに……)


(いや…待てラルバ!!)


 突如として精神世界にいるウラさんが静止させるようにラルバに話しかける。


(焦るな!!この男は次元を操れる。能力無効の空間を発現させる前に、自分の本音をどこか遠くの空間に飛ばして読めないようにすることだって出来るんだぞ!)


その言葉を聞くとラルバはハッとさせられ、切り替えて意識を集中させる。


(そうだ…こうやって何度も裏切られたことだってあった。そして危険に晒したりもあった。)


(……ありがとうウラさん。冷静になれたよ。)


(……今は不確定要素が多すぎる。そういうのはもう少し後になってからだ。)


 今までの記憶がフラッシュバックする。俺等を勝手に生み出して、実験する。挙げ句、希望は持たせておいて裏切る。本当に腹立たしい。自然と拳を強く握りしめる。


「お前等神の言う事なんて信じるに足らないからだよ。何度も何度もぶち壊しやがって……!!」


「…………」


 心は読めないが、この人間の持つものになんと声をかければいいのか分からなかった。

 そしてじげんの神は無言になる。

 

 (へ…てくれ…。)


「お前等みたいなマッドサイエンティストどもを俺が!報復し!あいつ……」


(ラルバ!!ウラン!聞こえるか!?答えてくれ!!)


 思わず感情的になっていて何も聞こえなかったが、脳が再起動してその声に気付いた。

 神に向けて喋るのを一旦中断し、ウラさんもその声へと意識を向ける。心は読めていないはずだが、流石上位の神といったところか、俺達の異変に気づいたようだ。


「……どうしたんだ?空間の神?」


 そんな神の質問には目もくれず心の中に居るネヴァと会話する。まず最初に口を開いたのはウラさんだった。


「どうしたネヴァ?今こっちは取り込み中なんだが。」


(そんな場合じゃ無いんだ!マガミが暴走した!)


「なんだ、そういうことは今までも……」


(違う!今回は私達にまで癇癪を起こして私達に危害を!)


「…あいつが?」


 ラルバは意外そうな顔をして、ネヴァに反応する。


(とにかく早く来てくれ!もう彼方此方破壊していて……このまで壊されてしまうかも知れないぞ!)


「……………分かった。こちらは私に任せておけ。」


(なるべく早くな!頼む!)


 そう言うと心の中からネヴァの声は聞こえなくなった。


(…ということらしい。ラルバ、体内世界まで行けるか?)


 ラルバは短くため息を吐くが、すぐに切り替えて口を開く。


(…暴走するのも気配りできなかったのも俺の責任です。それにこの状況じゃ僕がいくしかないでしょうし…)


 どうやらかなり自分を責めているようだった。少しだけ気遣うようにウランは話しかける。


(やけに自分を責めるじゃないか。そこまでに責めることはないぞ。)


(いや、ウラさん。気遣いは今は大丈夫です。)


 一言でラルバは気遣いを払い除け、


(ウラさんの言う本当の神様になるためにはこんなことも出来ないようじゃダメです。)


 そう言ってラルバは体内世界へと裂け目を発生させて体内世界へと向かう。


(……さて。)

 

そして残った俺は神へと意識を向ける。


「…よぉ。時の神。帰ってきたぞ。」


「……何があった?」


 じげんの神は違和感にすぐに気づいた。

 

(あんなに思い切って出てきた人間が一瞬でこいつと変わるなんて…絶対に何かがある筈…)

 

「…すまないが、俺もお前に何があるのか聞きたいことがいっぱいあるんだ。自供してくれたら助かるんだがね。」


 じげんの神の心を読んで一言で一蹴する。

 

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