第4神話   瓜二つ②

入った!)


 


 それでも頭部を少し動かし致命傷を喰らうのを避けた。だがそれでも完璧には避けきれなかったようで、メリケンサックの鋭利が蟀谷こめかみを掠って出血してしまった。




「っ!痛った。」




「―――!神!」


 


 綺麗な鮮血が神の蟀谷から頬を伝い、神の焦りを引き出す一つの条件を整えた。




「うーわ惜っしいなぁ。あと一息でモロに入ってたのになー。」




「うわー掠ったな。まぁまぁ深くいってるからヒリヒリするし、これは面倒くさい。元の次元に帰るまで待たないといけないんですけど?」




「へへーん、それは嬉しいや。有り難くそのお褒めの言葉に感謝します、よ!」




 瓜二つキメラが今度は1つの大きな光弾を勢いよく神に向けて放った。




 (急に真正面から?予知だと………追尾型の奴か。じゃあ光の粒子をバラバラに散らばせれば………!)


 


 目の前まで光弾が飛んできた。その瞬間光弾を瞬間移動の力を使って適当な空間へ光の粒子を移動させ、光弾が分散した。




 (よし!まずは………!)




 そう安心した束の間だった。




 (は?まさか!)




 追尾式の光弾の粒子を別の場所へ移動させたが、その後ろにもう一つ光弾が付いていた。ただ、その光弾は先程よりも歪な形状をしていた。




 その光弾は当たる前に眩い光を放ち、神の目と同時に人間の目を眩ました。




「眩しっ!」




「どうだ!俺の必殺!名付けてストレート・フラッシュ!」




「ぐっ……!(やべ……前が………)」




「よし、眩ました!おい俺!手伝え!」




「分かっている!」




 二人が合図を取りながら、またもや神に追撃を加えようとする。キメラ二人は大量の光弾で神に向けて放つ。


 だがそれでも神は目が眩んでいる状態でも瞬間移動を行い、攻撃が及ばない位置にまで避けたが、どうやら光弾は追尾式のようでキメラ二人の目を掻い潜るまでは追ってくる。


 


「クッソ!いちいちダサい技名つけやがって!」




 それでも神は光弾全ての光の粒子を一つ一つ瞬間移動させる地道な作業もこなし、分散させた。




「悪あがきを!」「すんじゃねえ!さっさと両方人間と古文書寄越せ!」




 神の集中が光弾に向かっている隙にまたもや攻め込む。全速力で神の間合いに入り込み、接近戦に持ち込む。




「喰らえもう一発…!」




 血がついて一部が赤く銀色に光るメリケンサックの鋭利と眩しく光る銀色のメリケンサックの鋭利が神を連続して襲う。


 辛うじて避けてはいるが、また攻撃が当たるのも時間の問題である。


 そのため、一旦キメラ二人と距離を取る為に大きく後ろへ飛んだ。




「…!人間、もう一回結構遠くに飛ぶから、しっかりしがみついとけ!あと何があっても喋るな!本当に舌噛みちぎれるぞ!」




「…!」




 人間は神の顔を見ながら頷いた。




「よし、もう一回…!」




「させるか……!」




 キメラの一人は、神が瞬間移動を発動させる前に空間に裂け目を発生させて、キメラ二人の目の前にテレポートさせた。




「は!?何…」




 予想外の出来事に驚き、唖然としている中でも二人が止まる筈もなくそのまま二人の拳が神を襲う。




 ドゴォ…!




 酷く強烈な音が周りに響き渡った。




「……ほぉう。」「へぇ、やるじゃん。」




「〜〜!あ~〜!痛ってえぇぇぇ…!」




(致命傷を避ける為にメリケンサックだけ瞬間移動させたが、それでもこの威力か…!)




 モロにボディを喰らい、かなり後ろへ吹き飛んだ。痛みによって呼吸が一瞬出来なかったが、人間へのダメージを無くす為に自分がクッション代わりになるように、前に人間を抱えて受け身を取って着地のダメージを最小限にしたが、仰向けになって倒れた。


 それでも先程の拳は体の器官全体を動かす神経が全て腹に集中してしまうほどの痛みであり、五感の機能が鈍くなってしまうほどだった。




「…神。…い神!…おい!」




 人間の遠くから聞こえる声が聞こえた。改めてあの二人に奪われていないか、心配になり首を少しだけ動かした。


 するとすぐ下を見るとダサいポロシャツの人間がいた。心の中で安心するとともに、遠くからでも聞こえる位の大きく、小さな声で口を開いた。




「あいつらがもう来てる!早く瞬間移動をしてくれ!」




 その言葉は神にとっては焦りを引き起こすものだった。そんな中神はある奥の手を使おうと考えた。




(くそ…!どうする!このままじゃもう………あの手しか…!)




 神は他にも何か手はないか考えたが今の状況だとそんな悠長なことはっていられない。


 神は腹を括り、行動に移した。




「もう……使うか。これはグロいから嫌だし………まだ聞きたいことがあるが、出し惜しむのも止めだ。全力で消し飛ばす……!」




「「なんだ!?」」




 神の迫力に気圧され二人のキメラは立ち止まった。何が起こるかは理解出来なかった。


 だがそれでも今から神が行うのは自分たちの命を奪うものだとは勘だが理解した。




 グシャッ…!




 するとキメラ二人の居た筈の場所にいつの間にか赤い液体の水溜りが出来ていた。




「…は?あいつらは?どこに行ったんだ?それよりあれって…血溜まりだよな…?」




 普段見ることのない光景に恐怖を覚えた。


 すると神はある程度回復したのか、自力で起き上がった。




「はぁ…無事だったか…。人間。」




「いや無事だったけど、あいつ達は?一体どこに行ったんだ?」




「あぁ、死んだよ。俺があいつらの細胞一つ一つを瞬間移動させて、跡形も無く消した。」




 淡々と告げる残酷な発言に恐怖した。5%だけでこれだけなのか?


 もし自分の立場が相手側だと考えると、今頃…。


 俺は固唾を飲み込み、身震いした。




「すまない。中々この世界じゃ慣れない光景だろ。少し怖がらせてしまったな。俺もあまりこの手は好きじゃない。」




「いやいやそんなことで謝らなくても…」




 この神という領域に達してしまうと最早相手を殺すのも容易いことなのだろうし、こんな集団がまだ沢山いると考えると、敵に回したら死んでしまうのは明白である。




「そうだ、改めてだなお前と……!?」




「…?どうした…ってうお!」




 そう言いかけた瞬間に神は一気に顔色の血相を変え、俺を右肩に担いで瞬間移動をした。




「な、なんだ……?」




 瞬間移動する前に居た場所にはパリ…パリ…という聞き覚えのある音が聞こえた。そこに俺は目を向ける。


 明らかに神の発動させた物では無い。だが裂け目はどこにあるのか見えなかったが、時間が経つにつれそれは大量の小さな裂け目が集まり、最終的にキメラと同じ人型へと変わり……




「ふぅ……危ないなぁ」「痛たたたた…なんてことしやがる。」


 


 体型、身長、更には服までもが元に戻っている、少し皮膚が欠損しているようだったが液体のようなものを、裂け目から垂れ流して一瞬で健全な状態に戻る。神が呆然としながらキメラを見つめる。




「お前等……まさか?」




「え?空間を操って分離してしまった細胞をまた一から繋げてまた形成した。細胞すら残っていない場所は即効性の回復薬を使って、細胞を再構築して治すっていう簡単なことだ。あ、あと服も空間どうしをつなげて元通りだ。ま、こいつらに感謝だな。」




 そう言うとキメラは自身の混ざった体に向けて言う。


 神は衝撃の発言を聞くと同時に、その理由を察する。




「……さてはお前の体を構成している奴等も一緒に倒さないといけない訳だ。創・造・神・の奴らめ…めんどくさいもん作りやがって…!」




(…構成している?)




 俺は神の言っている構成という意味が分からなかった。




「自分が上手くいかないからって他人に当たるなよぉ?神様。」




 またもやキメラは口車を走らせながら神に向けて煽っている。




「…………」




「お、おいまたあいつらのペースに乗せられたら……。」




 キメラの煽りをまたもや真に受けてしまい、また対抗してしまった。


 神は短所を露呈し、それが隙になっていることに気づいていなかった。


 


「神様。俺からのアドバイスですが煽りに対するスルースキルをもう少し身に付けた方が良いんじゃないでしょうかぁ?」




「しまった!(予知能力を使っていなかった…!)」




 背後から急襲してきた瓜二つキメラに対する反応が一つ遅れてしまった。




 ドシュッ




 神の首に向けて重い拳が決まった。




「―――!(やべ、クラクラする。)




 神の体はふらついているがそれでも尋常では無い精神力で耐えている。




「へー、結構思いっきりぶっ放したけど耐えるのか。すげえな。じゃあもう一発行くぞ!」




「……っ!」




 そしてまた拳が飛んでくるが、神はふらついても尚瞬間移動をして避ける。




「あー避けられちったか。『復活しないように見せかけて復活する』良い不意打ち作戦だと思ったんだけどな〜。」




「まぁ、少しだけでも不意を突く事ができたのは上出来だ。さてと……」




 そして再度光弾を瓜二つキメラとキメラが仕掛けてくる。それも特大のをだ。




「や、やべえ!あれに巻き込まれたら…!」


 


 人間がピンチなことに焦って叫ぶ。




(こ、これはやべぇ……こうなったら……!)




一か八かだが……あ・い・つ・ら・に届いてくれ…!


 そして淡い閃光に飲み込まれる前に俺はズボンのポケットからあるものを取り出し、次元の裂け目を繋げて目的の場所へと届ける。




(よし…取り敢えずは送った。後はよけ…)




「そうはさせん!」




 避けようとした瞬間に俺の周りを天から地まで空間の裂け目が割れて白く輝く空間に神と俺の体は覆われる。


 


「なっ!?」




「ど、どうした!?神?」




「の、能力が使えな……」




 起きたことを瞬時に理解することが出来なかった。少し冷静になると恐らくはどこかしらの空間から能力の効果を打ち消す概念を持つ空間を無理やり転移させたのだろう。


 それを理解した瞬間に背筋に寒気が走り、久しぶりに本当の恐怖を味わってしまった。

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