第11話

「 相席いいかな 」「 どうぞ 」最悪だ、相席なんて耐えられるのか。

 顔を少し上げる、頭が禿げあがった小太りのジジイと、ものごっい美女が、目の前に座っている。

 この世界で、あまり太った人は見ない、気温が原因もあるかもしれない、半端なく汗が出る、太っていたら、耐えられない熱さだ、前世で超デブだったので理解できる。


「 エール、ボアステーキ大盛、ケロッグの目玉のスープ、パン、それと残飯 」

「 んっ、残飯? 」

 スゲー美女の首には武骨な首輪がついている、もしかして奴隷。

 男はエールをがぶ飲み、「 エール追加 」

 この男ぶち殺したい、エールを飲みながら、隣の美女のお乳をもみもみ、股に手をいれている。

 苦節51年、最近触ってもらったけれど、触った事は無い、こんな不細工なジジイがぁ


 俺の料理が運ばれて来た、美味しいはずなのに、味がわからない。

 残飯も一緒にテーブルの上に、客の食べ残しを盛った本当の残飯だった、美女は手でそれを少しずつ口に入れている。


「 お嬢ちゃん可愛いねぇ、一晩金貨1枚でどうだぁ 」

「 俺は男です 」

「 おとこぉーーーーっ! 」大声出すなぁ、胸元を観てわからんのか、注目されるではないか。

「 くふふふふ、どうだぁ、君も触ってみるか 」

 ジジイは、お乳をもみくちゃにしている。

 どうしてだぁ、顔が燃えるように熱い、心臓がドキドキしているのがわかる。

 全力で料理を口に放り込み、逃げるように部屋に戻った。


 あんな綺麗な人が、ジジイの奴隷・・・

 妄想が爆発するように膨らみだした。

 心の奥底に封印した、思いが沸き上がって来る。


 もしかして、奴隷なら、結婚ってできるのか、傍にいてもらえるかもしれない。

 一生一人だと思い込んでいた、沸き上がる思いでどうにかなりそうだ。


 全く眠れない、夜中の3時頃だと思う、冒険者ギルドに来てしまった。

 奴隷についての資料を読んでいる。


 奴隷という存在、認識すらしていなかった。

 なんという世界なのだ、奴隷は人では無い、主人の持ち物として扱われる。

 主人は何をしても良い、殺そうが、売ろうが、慰めものにしても、問題ない。

 奴隷は主人から与えられた物しか、口に入れてはならない、着てはならない。

 奴隷が起こした事件は主人の責任となる。

 他人の奴隷に口を出す事は、マナー違反。


 無茶苦茶な気がする。


 しかしこれなら、奴隷を買ってお嫁さんになってもらえるかもしれない。

 俺は絶対に裏切らない、浮気もしない、一生をかけて幸せにする、そうしたら、もしかしたら俺の事を好きになってくれるかもしれない。

「 くぅぅーーーっ 」俺はどうしたらいい。


 タクヤの中では前世で醜悪な容姿をしていて、誰も近づかなかった、人に避けられ続けた事がトラウマになっていた、今の容姿は超絶美少年であると理解できていないのかも。


 どうしよう、何も手が付かなくなってしまった。


 MGJ奴隷商会、ベクラダで一番大きな奴隷商会である、街の中心から離れた場所に店を構えている、中心から離れると治安が悪いと聞いているので、近づいた事さえない場所。

 1人で行く勇気が無い・・・まずは奴隷を購入しないと始まらない。


 それに嫁を貰うなら、宿住まいってわけにも、家がいる、今の収入では、養うのに無理がある、「 はぁ~っ まだ、早い 」もっと頑張って、嫁がもらえるくらいになってから考えよう

 浮ついた気持ち、なんとか落ち着いてきた。


 気を静めながら、宿への道を歩いていると、少女が飛んできた、道路をころがっている。

「 えっ 」

「 毎度、毎度、盗みやがってェ、今度という今度は覚悟しろ! 」怒鳴るおっさん。

 男は、地面を転がっている少女を、さらに蹴とばす、体が浮き上がり、飛んで行く。

 幾らなんでもやり過ぎでは、少女の顔がちらりと見えた。

 俺の股を蹴り上げ、身ぐるみ剥がした奴だった。

 おっさんは、ガンガン少女を踏みつけだした。

 このままでは死ぬ。

 どうしてだろう、助けに入ってしまった。

「 盗んだ物を俺が買います、そのへんで 」

 盗んだのは、アップルプル1個だけ。 銅貨1枚支払った。


 全裸の少女、傷だらけ、白目を剝き口から血を吐いていて痙攣している、よく見ると痩せ細っている。

 俺のヒールでは、たぶん治せない、もったいないけれど、中級ポーションを無理やり飲ませた。

 みるみる、傷がふさがっていく。

 顔の前にアップルプルを置いて立ち去る。

 俺、何をやっているのだろう。

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