第10話

 マンティスの討伐部位はカマである、デカイ、馬車かダンドラでもいないと、背負って持ってかえるには無理がある、あきらめよう。


 キャベッジ草を採取していると、マンティスの死体にキラーアントが群がっていた、サイズは30cm 程もある蟻である。

 通り道をうっかり踏みつけたりすれば、骸骨にされる、恐ろしい魔物であるが、接触しなければ、まず攻撃してこない。

 面白い事を思いついた、マンティスを探す、キャベッジ草を採取していて偶然出くわすのではなく、探した。


 さっそく先制攻撃、「 エヤーカッター 」カマで対応された、こっちに向かって来る。

「 ファイヤーボール 」結局燃やした、もう一度 「 エヤーカッター 」今度は頭を切断できた。

 火を消して、麻痺ポーションを振りかける、そのあと、生活魔法で水をかけて薄める。

 気が付かれないようにするためだ。


 すこしでも動きが鈍れば、速さが92もあれば、襲われても逃げられるはず、もしもの時の安全策である。


 薄めた麻痺ポーションを振りかけた、マンティスがゆっくりと動き出す、巣に運び込むのを、気配を消して待つ(気持ちだけね)まだ気配を消すような能力は使えない。

 2時間以上、ゆっくりと観察、とうとう巣を見つけた。

 大きな蟻塚があった。

 猛毒のポーションを蟻柄に向かって投げつけ、全力で逃げる。


 逃げていると体の芯が熱くなってきた、数百匹から数十億匹いるとされている蟻の巣、1匹1匹はたいした事がなくても、数が多ければレベルアップは期待できる。

 ヤバイ、体が熱くて走れなくなってきた。

 大きな枝に葉を持つ木に登る、運を天に任せてじっとしているしかない、そのまま気をうしなった。


 気が付くと、木の上にいた、どうやら生き延びたようだ。

 体が軽い、全能感というのか半端ない。


 さっそくレベル確認。


 瑠楠 拓哉 ♂ 15歳

 称号 : 女神に愛されし者


 LV : 27 → 35

 体力 : 178 → 241

 魔力 : 243 → 315

 筋力 : 87 → 105

 早さ : 92 → 111

 運 : 27 → 30


 スキルポイント 8


 特殊能力 : グリモワール 異世界言語E


 レベルが30を超えた事で、鋼の剣が持てるように、魔法が同時発動できるようになった。

 大幅な戦力アップ。


 ギルドにキャベッジ草の納品に行くと、チャンダクマさんが走って来た。

 昨日もどらなかったから、心配させてしまった、宿から問い合わせがあったようだ。

 清算して急いで宿に戻る。


 正座中、メッチャ怒られている。

 俺を心配してくれる人がいたなんて、前世では34歳の時に母親が亡くなってから、誰一人待ってくれる人はいなかった。


 異世界に来てたった1ヶ月少しで、俺を心配してくれる人がいるなんて・・・

 ヤバイ! って思ったら間に合わなかった。

「 泣く事ないでしょ 」

「 本当に泣き虫なんだからぁ 」

「 この程度では、ノンだって泣かないよ 」


 精神年齢51歳、孤高の日本男児という矜持は何処に・・・ 精神年齢が原因で涙腺が緩んでいるのだろうか、涙腺が緩むほどの精神年齢なのか・・・

 Lvが上がって強くなっているのは間違いない、しかし泣いてしまった、肉体的にしか強く成らないのだろうか。


 怒られていて理解した、最弱だと思われている、ノンちゃんよりも弱い、つまり、城壁の外に出て魔物にであったら、即死すると思われている。

 メッチャ強いわけでもないが、少しは強い、冒険者としてやっていけるのだと、思ってもらうにはどうしたら良いのだろう。


 宿の部屋、ベッドの上でシーツをかぶり瞑想中、派手に泣いたので、夕食どうしよう、はずかしくて、顔出せない。

 しかし、朝飯食って無いし、昼飯も怒られていたし、お腹がグウグウ音を立てている。

 前世では不摂生は友達だったし、我慢できない事もないが、今の体は、大切にしたい。


 そっと食堂に、気配を消して(気持ちだけ)一番奥の隅に座る、恥ずかしくて顔が上がらない、テーブルのシミをガン観、若いほうの従業員さんが来てしまった、「 日替わり定食をお願いします 」

「 聞こえません、もう一度 」「 日替わり定食をお願いします 」「 聞こえません、もう一度 」「 日替わり定食をお願いします! 」

「 日替わり定食ですね 」やっと注文が通った。

 もう泣きそう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る