第3話

 馬車に乗せてくれたおじさんにおすすめの宿を教えてもらい、そこに向かっている。

 頭を膝に引っ付くほど下げてお礼を言えた、転生前はお腹がつかえてそんなことはできなかったので、非常に嬉しい。


“ 夜の砂亭 ” という宿、1階は食堂、2階と3階が宿、部屋は2種類、トイレと風呂が共同と、部屋に付いている、デラックスルームを一ヶ月 朝食付き、金貨1枚だった。

 デラックスルームは1部屋しか無いらしい、女将さんの後ろについて階段を上り、部屋に。

 ちなみに女将さんも腰布を巻いただけで、上半身は裸だった、垂れまくったお乳と突き出たお腹、服を着てほしいって思った。


 ベッド、机、テーブルとイス、タンス が一部屋に。

「 こっちだよ 」女将さんと俺はベランダにいる、当然ながら、道を歩いている人が見下ろせる。

「 水瓶の水が少なく成ったら言ってくれ 」トイレらしき穴も。

「 あ、あの、ベランダに? 」


「 どんなところに住んでいたんだい、2階建ての建物とかなかったのかい 」

「 水場が部屋の中にあったら、下の部屋に漏れるじゃないか 」

「 へっ 」

 当たり前のように言って出て行った。

 俺の家の周り、後ろも、前も、両横も、超高層ホテルだったんだぞ! 心の中だけで自慢してみた、泊まった事はないけれど。


 ベランダに立っているだけで、普通に道を歩いている人が見下ろせる。

「 理解できない 」


 汗でベトベトだったので、水瓶で体を隠すようにして、水を頭からかぶって、ベッドにダイブ、プロのゲームプログラマーとしての、異世界知識が役に立たない気がしてきた。

 少し考えようとしたのだが、そのまま寝落ち。


 ドアをドンドン叩かれて起こされた、小さな女の子、宿の従業員の連れ子 ノンちゃん9歳がドアの前に、「 さっさと水浴びて、直ぐにご飯だから 」

 凄く熱い気温、どうやら朝・晩、 水を浴びる習慣があるようだ。

 具材たっぷりスープとパンの朝食を強制的に食べさせられた。

 お腹が空いていたし、メッチャ美味しかったが量が半端なかった。


 さて、落ち着いたので状況整理中。

 俺の容姿、趣味で使っていたアバターそのものだった、理想の姿である。


「 女神様ぁ ありがとうございます 」


 次に直ぐにしなければならない事。

 着る物の確保、冒険者になる。


 宿まで歩いてきた、途中露天に服を売っている店があった、まずは服を確保。

 いつまででも、ゴブリンの腰布ではいられない。

 それに武器。

 お金を取り出す練習をした、グリモワールは取り出す場所を指定できる、剣だったら握った状態、服だったら着た状態などである、お金は拳の中に直接。


 いきようようと街に繰り出す、露天の服屋。

 男か女か、股に毛が生えているのかどうか聞かれた、プライバシーの侵害では、15歳なのに、前世ゴリラ並みの剛毛ったから、産毛さえ生えてない、とうぜんツルツルである。

「 男です、生えてません 」

「 腰布を巻く、贅沢な奴だなぁ、俺が子供頃は裸だったぞ 」

「 パ、パンツはありませんか 」

「 なんだ、それは? 」

 商売する気あるのだろうか、裸でいろ、腰布を5枚頼み込んで売ってもらった、他の者は子供には必要無いと言われた。

「 子供じゃないです、15歳です 」俺の異世界知識では15歳が成人であるはずだ。


「 バカを言うな、大人びたい気持ちもわからないではないが、ボウボウじゃなければ子供だ 」「 へっ 」

「 いいかぁ、大体だがなぁエルフ族は400年、獣人は100年~300年、ヒユーマンは50年、ドワーフ族は200年、魔法族は 300年~1000年以上生きる奴もいる 」

「 年齢と大人かどうかは関係ねぇ 」

「 股に毛が生い茂っているかどうかだ 」

「 はぁ~っ! 」

「 ほら、腰巻持って帰んなぁ 」

 草の弦のような物で縛ってもらい、胸に抱えるようにして歩いている。

 大人と子供の基準は、股に毛が生い茂っているかどうか・・・

 パンツナシで腰布だけ? 嘘だろう どんな世界なのだぁ・・・

 トボトボ、それなりの人込み、足元を見ても、誰もが裸足、靴ってないのかもしれない。

 衝撃の現実、ツルツルだと子供扱いだなんてぇ


 考えながら歩いていると、宿が見えて来た。

 早く宿に戻り、着替えたい、ゴブリンの腰布からおさらばしたい。


 眼の前に裸の少女、歩く方向に立っている、俺より背が低い、毛生えてないから、子供だ。

「 持っているものくれよ 」いきなりで意味がわからなかった。


「 ぎぃやぁーーーっ! 」突然股から脳天に突き抜けるような衝撃、股を抑えてのた打ち回る、買ったばかりの布を取られた、ゴブリンの腰布もはぎとられた、「 金は何処にもっている 」

 背中を蹴られ、頭を踏みつけられる。

「 何をしている! 」

「 ちっ 」 女の子は逃げて行った。


 股が痛くて息ができない。

 宿の従業員の叔母さんが、玄関の掃除をしていたので、気づいて助けてくれた。

 顔から涙や鼻水、涎が流れ落ちる、痛すぎて転げまわりそうだ。

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