第10話 魔術適性

 昨夜のパーティーはとても楽しめた。

 出てきた料理の味も良かったし、何より友人と食事をする時間を取れたことが嬉しかった。


 だが、そろそろ気分を切り替えなくては。

 学生生活を楽しむのも良いが、俺の第一目標は<ラストホープ>のシナリオとはかけ離れた未来を手に入れることなのだから。

 それに関連することで現在分かっているのは主人公であるレイブンが貴族院に入学できていないということ。

 ゲームだと最初の野盗イベントでレティアを助けた見返りに子爵家が協力してくれることになり、更なる味方と自身の成長を求めて貴族院へ入学することになる。そして魔術について学ぶこととなるが、センスがなくて唯一適性のあった火と学びさえすれば誰でも使えると言われている肉体強化の魔法のみを伸ばしていくことになる。

 センスがない故に他の属性魔法を使えなかった彼が貴族院に入らず独学で魔術を使えるようになるかと言われれば否である。悪神が何かしら動きを見せて彼を助けるかもしれないが、今のところレイブンの弱体化に成功している。彼に味方する貴族を減らし、力すらも削いだ。目的に向けてかなり良いアプローチができているのではないだろうか。


「おーい、リヒト次はお前の番だぜ」


 なんてことを考えているとグレイから声をかけられた。


「分かった。さて、俺の適性はどんな感じかな」


 俺たちは今、魔術の授業を受けている。

 初回授業ということで、今回は各生徒がそれぞれの魔法にどれくらいの適性を持っているのかを調べているところである。


 やり方は簡単。

 用意された魔導具に手をかざすだけ。


 特段難しいことでもないため、俺はすぐに適性検査に挑んだ。


「どうだった?」

「まぁ、それなりに良い感じか?」




魔術適性

火:C

水:B

風:C

土:B

特殊:毒魔術の適性あり




「ほ~、全部平均以上ってかなり良い感じじゃねーか!」

「しかも四大属性以外に毒の適性もあるじゃないですか!!」


 魔導具が調べた魔術適性は紙に写してもらえる。俺の結果をグレイとレティアに見せると嬉しそうに騒ぎ始めた。


「それでもSはもちろんAもない。特殊属性だって毒って華がないというか……」

「いや、特殊属性ってのはあるだけですごいんだぞ。たく、お前は自分に求めるレベルが高すぎるんだよ。この武術オタク……っていうか、お前あんだけ武器も使える上に魔術の素質も上位層ってどんだけ――――」

「声がでかい。黙れ」


 グレイがあまりにも大きな声を出すから、手で口を塞いでやった。


「ところでレティアの結果はどうだったんだ?」

「ふがふぐふががが――――」


 隣でグレイが何か言おうともがいているが無視する。


「わ、私ですか? その、あまり褒められたものではないので」

「見せたくないか?」

「いえ、リヒト様なら構いません」




魔術適性

火:G

水:A

風:E

土:E

特殊:氷魔術の適性あり




 ゲームのデータ通り氷魔術の適性を持つようだ。

 他は水の適性のみが俺を上回り、風と土は申し訳程度、火は全く使えないといった感じである。


「って、レティアも特殊魔術が使えるのかよ!!!」


 俺の手を払いのけたグレイが再び大声を出す。

 昨日のパーティーでレティアのことを名前で呼ぶようになった。


 三人のうち二人が特殊魔術の適性があると分かったことがA組中に知れ渡り、ざわつき始める。


「バカのせいでめんどくさいことになりそうだな」

「もがっ、ふががががふが――――」

「しゃべるなって。で、そのバカの適性検査はどうだったんだ?」




魔術適性

火:D

水:D

風:B

土:C

特殊:なし




「まぁ、レティアのあとだと霞むな」

「ちょっと待て。憐れみの視線を向けるな! 言っとくけど、Bが一つあるだけでも平均よりは上なんだからな!!」


 魔法適性は最上がS、そこからA、B、C、D、E、F、Gと下がっていく。Gとなると最早その魔法を使うことすらできない。FとEは生活をほんの少し楽にする程度には使えるというくらいの評価。火で言うなら、マッチ代わりくらいならできる。D以上が攻撃に魔術を転用できるようになる。そして適性がBの属性を一つでも持っていると優秀だと言われている。Aは学年の主席を狙えるレベルだし、Sなんて数十年に一度レベルの天才だ。


「それは知ってるよ。ただ、レティアが優秀過ぎるだけだ」

「あ、ありがとうございます。リヒト様にそう言って頂けるととても嬉しいです。もし魔術関係でご協力できることがあれば何でも言ってください! 私、きっと役に立ってみせますから」


 ゲームのシナリオでレイブンに協力していたことと言い、今俺の力になろうとしてくれていることと言い、レティアは受けた恩は絶対に返そうという考えを持っているらしい。


 俺からすると魔術適性からして優秀な彼女が力になってくれるのはとても心強い。


「何かあれば頼むよ」

「はい!」


 その後、俺たちはいくつかの授業を受けた。

 初めて学ぶことが多かったため、貴族院生活二日目からなかなかハードな一日となった。



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