匿名系イベントにおける得票機会の不均衡とその対処について(2)
旧来、こうしたイベントにおける得点機会の公平性の担保に関しては、以下のような方法が考えられてきました。
第一に、投票者を参加作者のみに限定し、かつ全作品の完読義務を設けるという方法。過去、実際にこの方式で開催されたイベントもあります。しかし、参加のハードルが非常に高くなり、また閉鎖的な雰囲気となるため、「数こそ正義」を旨とする匿名コンでの採用は考えられません。
また、参加作者のみに完読義務を設け、一般読者からは自由に投票を受け付ける形にすると、読者票は現状と同様に序盤作品に集中することとなるため、意味がありません。
第二に、開催期間中、作品の掲載位置を定期的に並べ替えるという方法。これも他の方のイベントで過去に行われたことがありますが、結局番号が付いている以上は順番通りに読みたがる方が多く、また単純にどの作品が既読か分かりづらいという不便さもあり、煩雑な処理(※)に見合うだけのメリットは見出だせません。
第三に、掲載位置に応じて得点に加算処理を行ったり、上述の「参考スコア」のような実得点以外の数値指標を正式順位の算出に用いるという方法。これは一見有望に思えますが、不均衡の存在を前提とした処理をルールとして組み込んでしまうと、実際にそこまでの不均衡が生じなかった場合をはじめ、諸々の突発的な事情に対処できず、却って公平感を削ぐ形となりかねません。
また、後半の作品ほど有利になる扱いを明文化すると、誰も前半に作品を出したがらず、初動の盛り上がりが損なわれる可能性も危惧されます。
第四の方法は、応援ハート等による無制限投票の形式ではなく、全作読了者を対象に、気に入った作品を上限数まで選ぶなり、持ち点を割り振るなりして投票してもらうという形。これが最も公平かつシンプルな解決法に思えますが、しかし、参加者間の交流の促進を旨とする匿名コンにおいて、上限を定めて「選ぶ」形式は、誰が誰の作品に点を入れただの入れないだのでイヤな気持ちになる方が必ず出るため、採用したくないという事情があります。
その点をクリアするには匿名投票という方法もあり、現に南雲皋さん主催の「匿名短文企画」シリーズはその形式で平和裏に進行されています。しかし、これは主催者への信頼に依拠する集計方法であるため、板野のような胡散臭い輩が主催するイベントでの採用は考えられません。板野の主催においては最低限、誰がいつどの作品に投票したか、その透明性の担保が必須条件となります。そうすると、上記の「名前を出して選ぶ形式ではイヤな気持ちになる人が出る」問題とはトレードオフの関係になります。
また、いずれにしても、この形式では必然的に投票がイベント後半に集中するため、オープン当初から投票の動きがリアルタイムに可視化されることがなく、楽しみや盛り上がりが削がれることも考えられます。(続く)
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