竜は動かず 5

 リギは残った兵士に指示をして、近くの弩砲を引いてこさせた。全部で三台ある。矢をつがえ、それぞれ五人がかりで弓を引く巨大な弩だ。

「用意できました」

「よし」


 リギは竜のようすを見やった。弩砲が自分に向けられても竜に反応はない。やはり知性はないのだとリギは判断した。

 攻撃開始の合図だ。腕を振り下ろす。


「撃て!」

 三台の弩砲から三本の矢が射出された。普通の弓とは大きさも速度もけたちがいの威力だ。そのすべてが竜の胴体に命中する。金属の塊を打撃したような音が響く。


 矢は突き刺さらなかった。しかし、竜の強靱な鱗にひびが入った。割れたところから赤い血が流れる。


「効いている……! 無傷ではないぞ!」

 兵士たちの間から歓声があがった。


 竜は身じろぎしたがそれだけだった。声も発せず、その場を動こうともしない。まるで耐えようとしているかのように。

「次だ!」

 リギは声をはげまして第二射の用意をさせる。



「そう、ぼくは父上がこわかった」

 噛みしめるようにシヴァルはくりかえした。

「ちゃんと向き合わずに逃げたんだ。それがすべての原因だった。一回死んでようやく気づいた」


「ならばもう一度、今度はきちんと死んですべてにけりをつけるがいい!」

 マイザーンの容赦ない斬撃。シヴァルは椅子の脚で食い止める。腕の傷に衝撃がはしり彼の顔がゆがむ。刃は椅子の脚のなかばまで食い込み、止まった。つばぜりあいのようなかっこうになり、兄弟は至近距離で顔を突き合わせる。


「ぼくは臆病でこわくて逃げるような男だ。けど逃げないこともできる」

 エナがそう言ってくれたのだ。

「兄上。ぼくが気づいたのはそれだけじゃない。もうひとつ、今回の原因として重要なことに気づいたんだ」


 痛みと圧力に耐えながら、

「アレックス先生のことを憶えていますか」

 と、静かにシヴァルはその名を口にした。


 ごく近い距離にある兄の目が見開かれた。スイートトゥース・アレックスの事件は、マイザーンの心の中に大きく跡を残しているという証拠だ。

 兄弟に七族の共栄という、ヴュルキン王の方針と異なる思想を教え、そのために斬首されたアレックス先生。


「ぼくはあれで震えあがってしまった。あのとき以降父上の言うことに逆らおうと思わなくなってしまったんだ」

 椅子の脚にかかる剣の圧力が減っている。シヴァルは兄の剣をなんとか押し返して距離を取った。

 追撃は来ない。


「兄上。兄上が父上に意見しなくなったのもそのころからだとぼくは記憶しています」

「なにが言いたい」

「かんたんなことです。ぼくは父上がこわくて暴走した。では兄上、あなたは?」


「そう、あなたも父上がこわいんだ」



 弩砲の矢は竜の体に確実にダメージを与えていた。命中したところの鱗は割れて剥げ、血が流れている。


 戦闘指揮官としてリギは優秀だった。弩砲には徹底的におなじ箇所を狙わせて傷口を大きくしていく。

 さらに油を投げつけ、そこに火矢だ。ところどころに炎がまとわりつき、黒煙が立ちのぼる。


「竜は弱っている。あれを用意しろ」

 リギから次なる命令を受けた兵士は当惑した。

「は、しかし、あの矢は奥の手では……?」

「かまわない。どうせドラグニールのやつらは戦わずに降伏する。わかったらはやく持ってこい!」


 ジューンは動かない。歯牙にもかけない、のではない。確実にダメージはある。弩砲による攻撃を食らうたびに、痛みが全身を駆けめぐる。

 それでも、ジューンはうめき声ひとつたてずただ耐えている。


 反撃をするわけにはいかない。威嚇するわけにもいかなかった。竜の行動によって和平が成ったなどと、ごくわずかにでも思われてはならない。

 すべてはシヴァルとマイザーンの話によって決さなくてはならないのだ。ジューンは主役になれない。なってはいけない。


〈ボクは七族ではないのだから〉


 逃げようともしないのは、シヴァルの説得がどうなったか不明だからだ。もしうまくいかなかったなら、彼の命を救わねばならない。

 雇い主として、見習い調停士の身の安全を守る義務がある。

 そのためだけにここにいるのだ。


 さらに弩砲の斉射が来た。体の芯までひびく衝撃と激痛。歯を食いしばってジューンは耐える。

〈だが少々きついぞ、シヴァル。まだ埓はあかないのかね〉


 兵士が戻ってきた。

「爆発矢、用意できました」

 リギはうなずき、獰猛な眼を竜に向けた。

「よし、こいつでとどめをさしてやるぞ。バケモノめ」



 天幕の中にマイザーンの笑い声がひびく。

「ははは、なにをばかな。私が父をこわがっているだと?」

 作りもののジョークを聞いたような笑いだった。


「本当にそうなら独断でドラグニールを攻められるわけがない。父の顔色をうかがって首都でちぢこまっているだろう。私は父のなしえなかったドラグニール攻略をなしとげ、莫大な功績とともに次代の王となる!」


「あの殺し屋の話によれば……今回の侵攻はぼくがドラグニールにいるのがわかってから急ごしらえで作った計画だとか」

「日陰め、話したのか」


「父上より大きい功績をたてることによって父上から怒られることがなくなる、という動機がなかったと言えますか。父上に話さず独断で事を起こしたのは自分ひとりが大功績を手に入れて父上より上に立ちたかった。そうではないと言えますか」


 はじめはマイザーンの剣に押され、逃げ回るばかりだったシヴァルが、いまや言葉によって場の空気を支配しつつあるようであった。


「それこそ父上をこわがっている証拠」

「なんだと」

「ぼくを殺し、ドラグニールを手に入れても父上はあなたを後継者にしないかもしれない。そもそもドラグニールを手に入れても父上は功績と認めないかもしれない」


「そんなことはない、ドラグニールはディント王国領だと父はずっと主張している。経済的にもドラグニールの価値ははきわめて大きい」


「恐怖は視界を暗くする――そう言いますよね。兄上は父上への恐怖で近視になっている」

 シヴァルはマイザーンをきっと見た。


「ぼくを暗殺して、その罪をドラグニールになすりつけ、攻め込む……たしかにそこだけ見ればいい策だ。ドラグニールの価値はたしかに巨大だし、ぼくという競争相手も排除できる。でもそのあとは?」


 ディントがドラグニールを占領すれば、マガティーア国を筆頭にほかの国がだまってはいない。どのような理由であれ、いちど竜の盟約が破れてしまえば戦争になることは避けられないだろう。


「父上がそれをよしとしますか。それを考えればドラグニール侵攻は功績ですらないといえるのです!」

「だまれ! くどくどと知ったふうな口を!」


 勢いを増す攻撃。それはそのままマイザーンの心をあらわすように荒れ狂っている。

「私が父を恐れているだと!? 知ったふうなことを! 私は! 良き王になるために! 父のようにならないために行動してきた!」


「ドラグニールを攻撃するのは良き王ですか!?」

「私が人を殺したいと思うか! おまえだって……好きこのんで弟を毒牙にかけようとしたと思うのか!」


 自分の言葉にマイザーンははっとした。

 やはりやさしい兄は死んではいなかった。シヴァルの胸にこみあげるものがあった。


「兄上!」

「だがもう遅い!」

 迷いの糸を断ち切るように剣を振り下ろす。

「遅くない!」


 シヴァルが夢中で振り回した椅子の脚が剣をはじき飛ばした。マイザーンの手をはなれた剣は回転しながら天幕の床をすべった。

 ふたりの実力を考えたらありえないことだ。シヴァルは信じられない思いで、自分が握った椅子の脚を見る。


 マイザーンも茫然としている。

 これは、マイザーンの剣が迷いを断ち切れず、糸に絡みとられて剣先がにぶったからにまちがいなかった。


「ぼくらふたりの目的は同じじゃないですか。どうせ作戦を立てるならそっちにしましょうよ。兄上が王になるには」

 ついにマイザーンは長い長い息を吐き出した。その鍛えられた肉体から殺気が去る。


 長い沈黙があった。


「ほんとうに……私たちはふたりで話し合うべきだったな。もっとはやくに」

「父上に禁止されていなければ」

 シヴァルはマイザーンに笑顔をむけたが、兄はまだかたい顔であった。

「だがどうするつもりだ」


「まず父上におびえるのをやめるところからはじめましょうよ。正直、認めたところでこわいものはこわいですけど、ふたりならなんとかなる」

「……そうだな」


 シヴァルの差し出した手にマイザーンが応じようとした。二人の手が固くにぎられる、その直前。

 天幕の外で、巨大な音がした。


   (@_@)


 ふたりは握手しかけた手を凍結させた。

 音は連続してふたつ。

 はじめの音は爆発音であり、次の音は巨獣の咆哮であった。


 その咆哮が苦痛の色をおびていることにシヴァルは気がついた。

「……先生!」

 急いで帽子をマイザーンに返すと、シヴァルは天幕から走り出ていく。


「先生だと?」

 マイザーンは帽子のかたちを整え、しっかりかぶってから弟のあとを追った。


 ふたりが天幕の外で見たのは、わき腹から黒煙を立ちのぼらせ、おなじ場所から雨のように血を流しながら、天をあおぎ吠える竜の姿であった。

 軍の強力な兵器が竜の胴体に甚大なダメージを与えたのだと、シヴァルにもわかった。


「効いています!」

「よし第二射用意!」

 大きな弩の近くで指揮官らしい男が指示を出している。


「兄上、すぐに攻撃中止を! おねがいします」

「おまえはあれがなにか知っているのだな」

「詳しいことはなにも。でもあれはきっと先生に関係が……」

「先生とは?」

「とにかく、早く止めなくては!」


 ふたりが話しているようすを、竜のルビー色の目がとらえていた。

〈どうやらうまくいったようだな〉

 はげしい苦痛の中でジューンは会心の思いだった。あの頼りなかった少年がみごとにやってのけたのだ。見る目はまちがっていなかった。


 ならばもう大丈夫だろう。

〈休ませて……もらうぞ……〉

 ジューンは竜化を解いた。


 彼女に注目していた多くの者は目を疑った。竜がなんの前ぶれもなく消え失せたのだ。

 とまどい、ざわめきの中で、気づいたものはいなかった。

 いままで竜が蟠踞していたその足元に、小さなはだかの少女がうつぶせに倒れていることに。


 リギがマイザーンの姿を認め駆けよってきた。

「あの怪物はどうした?」

「消えました」


 リギの声は畏怖で震えている。

「これは五十年前とおなじ……! まさか、あれは本当に竜だったのでは」

 声のみならず体まで震わせて、

「王子! ドラグニールはやはり攻めるべきではないのでは」


「実は弟が生きていることがわかった」

「ほんとうですか、では……」

 期待するような目に、マイザーンはうなずいてみせる。

「兵を返す」


 リギはあきらかにほっとしたようすであった。周囲の兵もリギの不安を共有していたのだろう、マイザーンの言葉におたがい顔を見合わせて笑みをこぼしている。


 実は、ほっとしたのはマイザーンもだ。配下が攻撃中止を受け入れないおそれがあったからだ。

 ゆたかな都市の占領軍となれば役得ははかりしれない。それを目前にしてただ帰るのでは納得しないのではないか。


 だがリギまでが竜におびえているなら、その感情を利用することにより、反発なしで軍を収めることができるだろう。


「だが――」

 マイザーンは竜が消えたほうを仰ぎ見て、

「実際あれはなんだったのだ?」

 

 倒れ伏した少女の身体は、わき腹がえぐれ血が止まらず、さらに全身に傷ややけどがあるひどいありさまだった。

 ほぼ死んでいるようである。

 しかし、やがてやさしい光が彼女の全身を包みこみはじめた……。


 静かになり逃げた兵たちも少しずつ戻りはじめている。

 陣の復旧がはじまった。


 マイザーンはシヴァルをリギら配下に紹介した。

「弟だ」

「なるほど、ドラグニールの使者とは、第二王子の生存を知らせるものだったのですな」

 みな、別段ドラグニールに敵意があるわけではない。シヴァルを迎え入れるのに抵抗はなかった。


 やや離れたテントの陰からそれを見る者の姿がある。


 片腕が折れたか、だらりと垂らし、着ている服は破れ、髪も乱れ、顔も体も土に汚れている。立っているだけで苦痛に息を切らしている。

 目を見開き歯をきしらせるその表情から冷静さというものは全く見られない。


 陰が似合う男。

 日陰だ。


「おのれおのれ殺す殺す」

 いまの彼の目にはシヴァルしか映っていない。シヴァルを殺すことだけだ。となりにマイザーンがいることも、周囲に兵士たちがいることも眼中になかった。

 自分がなぜシヴァルを狙うのかもわからなくなっているのかもしれない。


 特製の毒を塗ったナイフ。シヴァルが反対を向いた瞬間、日陰はとびだした。

「おれならやれる!」


 ナイフを投げた! 誰も気づいていない。

 いや、ひとりだけ。

 歴戦の猛者、マイザーンだ。


 マイザーンはとっさに弟を突き飛ばした。殺意の光と化したナイフが一直線にマイザーンを襲う。かすっただけでも死だ。

 ナイフはマイザーンの帽子を弾いて宙に舞わせた。さいわい彼の体に刃が届くことはなかった。


 日陰はナイフと同時に駆け寄り、シヴァルにとどめを刺すかまえだった。凄まじい速さで走ってくる日陰を、マイザーンが一喝した。

「おまえの仕事は中止だ! 止まれ!」


 ただの大声ではない。戦場で何千何万の軍を叱咤する将軍の声だ。日陰は金縛りにあったように、あるいは正気にもどったかのように停止した。


「無事かシヴァル」

「……はい」

 シヴァルは何がおきたのかまだわかっていなかった。


 周囲の兵士たちがこちらを見ている。彼らのなかでざわめきが広がっていく。それはシヴァルが命を狙われたからでも、日陰の存在のせいでもない。


 マイザーンは自分の帽子が地面に落ちているのを見つけた。

 頭がむき出しだ。角は切ってあるとはいえ髪の中に隠れるほど短くはない。まわりの兵士の目にはあきらかだった。


「王子の頭はじめて見たが」「あれはなんだ?」「角……?」

 ざわめきはどんどん大きくなっていく。


 ここが覚悟の一手だ。マイザーンは配下の者にむけ、むしろ頭部を誇示するかのように相対した。

「見よ! ここにいるのはわが弟だ。弟シヴァルは生きていた!」


 シヴァルを彼らの前に押し出し、

「私は誤った。証言のみでドラグニールの不実を鳴らし、攻めようとした。さきほどの竜も私のあやまちを叱ろうと出てきたのにちがいない。それが証拠に、弟の生存によって私があやまちを認めたら消えてしまった」


 マイザーンの演説は人をとらえて離さない。

「よってわれわれは軍旗をディント王国へ帰す。兵士諸君らには申し訳ないがむろん出征期間に見合った補償はさせてもらう。今回の出征には戦闘も勝利もないが、堂々と帰還しようではないか!」


 兵士たちは歓呼でこたえたが、一〇〇パーセントではなかった。演説の内容が悪いのではない。

「諸君の気になっていることはわかっている。これのことだろう」

 と、マイザーンは自分の角をさわる。


「そう私は雑ざりだ。いままではそれを恥じて帽子をかぶっていた。しかし、弟が言ってくれたのだ。恥じることはないと。だから私は帽子をとった。私の決意の表れである。それを目にしたのは諸君らがはじめてだ!」

 歓呼の声はさっきより大きくなった。


 見ているシヴァルはあらためて感服した。自分には、こんなふうに虚実のまざった話をこんなに堂々とすることはできないだろう。どうしたって挙動不審になってしまいそうだ。


 兵士だってマイザーンが自分から帽子をとったのではないことは見ていたはずだ。が、そんなことはどうでもいいとばかりに王子をたたえている。彼らにとって重要なのは事実ではなく、王子が自分たちを軽んじていないという実感なのだ。


 それも計算のうえでマイザーンはやっているのだろう。人心掌握の力。やはり兄上はすごい、とシヴァルは思った。


「キミはこれからどうする」

 と、シヴァルは声をかけられた。

 気がついたらジューンが隣にいる。


「先生!」

 彼女はボロボロの布を体に巻いて、まるでラングルのようにしている。倒れたテントからはぎ取ってきた布だ。


「どうだ、初日のキミのようではないかね」

 自分の姿をシヴァルに見せつける。華奢な肩がむき出しだ。


「大丈夫なんですか?」

「なんのことかな」

「だってすごい攻撃を受けていたじゃないですか」


「受けていたのは竜だろう?」

「はい、だから……え?」


 ジューンはしれっとしている。

 一見、彼女はよごれているが傷はないように見える。しかしよく見ると脇腹をかばうように手を置いている。


「……わかりました。竜です」

 シヴァルはジューンの言いたいことがわかったし、ジューンはシヴァルがわかったことがわかった。

 つまりジューンが竜ではない、ということにしておけ、と言っているのだ。


 ジューンは満足そうにうなずいた。

「かけひきというものがわかってきたようじゃないか」


「あなたがドラグニールの使者だろうか」

 マイザーンがジューンのもとにやってきた。

「このような身なりで失礼する。ドラグニールの使者スペクタクル・ジューンだ」


 マイザーンはジューンの姿を見て、

「竜の騒ぎに巻き込まれたと見える。災難だったな」

 本当にそう思っているのか、薄々感づいたうえでそう言っているのかわからない。


 まともに交渉していたら手ごわい相手だったにちがいない。ジューンは今のちょっとしたやりとりでそう感じていた。

 シヴァルにまかせたのは正しかった。

 関係性のあるシヴァルでなければ成功はむずかしかっただろう。


「ぼくはいちどディントに戻るつもりです」

 とシヴァルはジューンに言った。

「ぼくは帰るつもりです。父上に王にはならないことを告げなければ」


「王が聞き入れると思うか?」

 ジューンは心配そうな口調だ。父王ヴュルキンの意志を変えるのは容易なことではないだろう。なにせ斬首王なのだ。


「なんとかしますよ」

 シヴァルの声は、もう頼りないものではなかった。兄を説き伏せたという自信が彼を一人前にしていた。


 そしてその兄が今回は味方になる。父親に対抗できるかもしれない。


「そういうわけだ。われわれは兵を返す。さわがせた謝罪をしよう。本国が落ちついたらあらためて」

 マイザーンの出した手を、ジューンががっちり握った。


「先生……」

 いよいよ別れるときだ。シヴァルの声が揺れている。

「キミはよくやった。泣くな。まだ終わったわけではない。本番は国に戻ってからだろう」

「はい!」


 ジューンは少しだけ背のびしてシヴァルの頭に手を置いた。

「惜しいな。キミならいい調停士になれただろう」

「ありがとうございました!」

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