第3話:金貸しの主(あるじ)殺人事件。

蓮乗国れんじょうこくなんてところに来てしまった幸太郎。

訳が分からないまま遊女の月鈴ユーリンの部屋にやっかいになっていた。

なんでこの世界に来たのかは未だに不明だが、それでも少しは慣れてきていた。

月鈴とも、知らない間に彼氏にされてタメグチで普通に話していた。


月鈴ユーリン・・・月鈴〜」


「は〜い、女将さん」


「あ、月鈴・・・あんた男を咥え込んでるって他の子達が噂してるけど

それ本当なのかい?」


「そうだけど・・・お店の前に倒れてたところを私が拾ったの」


「拾ったのって犬コロじゃあるまいし」

「いいかい、遊女は恋愛御法度だからね、男を好きになんかなったらおしまいだよ」


「だって好きになっちゃったらしょうがないもん、それに彼を追い出す訳には

いかないでしょ?」

「ダメって言うんなら私、お座敷には出ないから」


「私を脅すきかい?」


「お願いしてるだけ・・・」


「わたしゃ知らないからね・・・おまえが面倒見な」

「お座敷には通さないようにしなよ・・・迷惑だから」


「分かりました・・・じゃ〜置いてあげていいのね?」


「私もそこまで人非人じゃないからね」

「おまえが責任持って面倒見るってのが条件だよ」


よかった・・・もう少しで幸太郎は紗蘭宮から追い出されるところだった。

ここを追い出されたら野垂れ死することになっていた。


月鈴はお客は女性が多いって言ってたけど、なんでかなって思ってもう一度月鈴ユーリン

聞いてみたら、女性の客は大家の奥さんとか嫁入り前の娘さんとかが多いんだ

そうだ。


遊郭にやってくる理由は彼氏や旦那さんを喜ばせるための手管、いわゆるテクニックを身につけるためなんだそう・・・セックスの仕方を遊女さんに学びに来てるんだ。

それで女性の客が多い訳が分かった。

スケベな男の客と違って夫婦生活のためなんだ・・・偉いね〜。


月鈴ユーリンのお勤めは夕方からだったから昼間、月鈴ユーリンが侍女の「呂衣呂衣ろいろい」を連れて買い物に出かけるって言うので幸太郎も月鈴の腰巾着みたいに後について街に出た。


で、とある屋敷の前まで来た時、侍女の呂衣呂衣が言った。


「あのお姉さん、最近このお屋敷の金貸しのあるじが奇妙な死に方をしてたって町中の噂になってますよ」

「死に方が変わってるからきっと殺されたんだろうって・・・」


「そう、奇妙な死に方?」


「なんでも蜘蛛の巣でぐるぐる巻きにされて天上から逆さ吊りにされて肢体は

血を抜かれたみたいに干からびてたんですって」


「まあ、手間のかかることね」

「それはたぶん人間の仕業じゃないでしょ?」


「このあたりも平和なようで妖怪や怨霊が出没するから、そういう類の仕業かもね」

「一掃してしまう手もあるけど、手強いからこちら側の犠牲を考えると全面駆除は

厳しいし時間がかかるでしょうね」


「でも、お姉さん、妖怪って普段は街には降りて来ないんでしょ?」


「まあ、それは時と場合ね」


「人間の中には変わった好色人がいて妖怪や物の怪や幽霊の女をそばに置いて

悦にいってるようなモノ好きな金持ちもいるって話だよ・・・」


「わ〜キモ〜」


幸太郎はふたりの話を聞いていて思わず口走ってしまった。


「ね〜キモい話よねダーリン」


「殺されたって言う金貸しのお屋敷のあるじもお金持ちだったんでしょ?お姉さん」


「そうね・・・まあどうせ犯人の予測はつくわね」


「え?月鈴ユーリン・・・犯人分かるのか?」


「まあ、私たちも同じ穴のムジナだから・・・臭いで分かるの」


「同じ穴のムジナ・・・って?」


「私も人間じゃないから・・・私も妖怪みたいなもの・・・厳密には妖怪と人間のハーフ・・・半妖なの、私」


「半妖?・・・そうなんだ」


わずらわしいことには関わりたくないけど、放っておいたらまだ犠牲者が

出るかもね」

「それに開封府「警察」のおまわりも刑事もあてにならないからね・・・」

「まあ人間が出張って来て束になってかかっても食われて犯人の犠牲なるだけ」

「このまま放っておいたら迷宮入りになちゃうかもね・・・」

「暇だから調べてみる?・・・ダーリン」


「え?俺?・・・」


「当たり前でしょ・・・私の彼氏なんだから自分の彼女に協力しなきゃ」


月鈴ユーリン・・・お座敷があるだろ?」


「夜だけだよ・・・昼間は時間あるでしょ?・・・」


「あ〜俺さ、ホラーとかオカルトとか妖怪とか怖いやつ無理だから・・・」


「なに、軟弱なこと言ってるの・・・エッチさせないわよ」


「え?エッチなんかさせてくれるの?」


「金貸しのあるじを殺した犯人を無事、とっ捕まえたらね」

「ちゃんとしないと、それまでエッチはお預け・・・」


「なんだよ、それじゃ俺がまるで月鈴ユーリンとエッチしたいために事件に

協力するみたいじゃないか」


「あら、違うの・・・したくないんだエッチ」


「え〜したくないとは言ってないだろ?・・・自分の彼女とはエッチしたいし」


「あの〜・・・おふたりとも公共の大通りですよ、下ネタ連発ははしたない

です」


呂衣呂衣が顔を真っ赤に染めてそう言った。


つづく。





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