Scene 4:意外な展開
――タオルを顔に当てると、
それを使って私は髪や
「それにしても、すごい雨の音だね。でもおかげで雷の音が相対的に緩和して聞こえるかな? 私、ビビリだけど急に大きな音がしなければそこまで驚かないと思うし」
「そうなんだ? 俺はやっぱり雷の
「
「どうかな……。自分ではあまりよく分からない」
苦笑する彼に対して、私がクスクスと笑った直後のことだった。
まるで世界に
熱い体温やタオルと同じ匂いが広がり、さらに耳元には最高潮に達しているような心臓の激しい鼓動が響いている。
……あれ?
私もドキドキしているけど、耳に伝わってくるその音は自分のものとは違う。つまりこれは
それを認識した瞬間、我に返った私は慌てて彼から離れる。
「ご、ごめん! 私っ、つい……」
「う……うん……」
お互いになんだか気まずい。それっきり私たちは黙り込んでしまった。
周囲には相変わらず雨や雷の音が鳴り続けている。そこに混じって、たまに目の前を通る自動車のエンジン音や水たまりを弾く音も聞こえてくる。そんな『騒がしい沈黙』が私たちの間に流れる。
ただ、それからしばらくして私と
すかさず私は持っていた巾着袋からスマホを取り出して画面を見てみると、誰かが私にメッセージを送ってきたというのが判明する。
早速、アプリを開いて確認すると、それは花火大会に誘った幹事的な役割の
「
「うん、俺にも
「待ち合わせもなしで、このまま解散って話みたい。それと今、駅前は帰宅の人たちが殺到して大混雑だって。
「だからこそ、待ち合わせをせずに解散ってことにしたんだろうね。その状況だと集まるのは難しいし、集まったところで帰るだけだから。
「でも花火大会が中止になっちゃって、ちょっと残念だね」
「うん……。この天候じゃ、やむを得ないけど。主催者側としても、強行して何か大きな事故が起きたらマズイだろうからね」
その後、私たちはそれぞれ
そういえば、私と
「
「ただ、まだこの感じだと走って帰ったとしても確実に濡れちゃうだろうね」
「だよねぇ……。困ったなぁ……」
雨の降り続く空を見上げ、重苦しい声を漏らす私。
するとなぜか
「まぁ、
「えっ? 傘があるのっ!?」
「うん、折りたたみの傘を持ってきてる。リュックの中に一本だけ入ってる。
「わ、私だけが使うわけにはいかないよ! それなら途中まで一緒に帰ろうよ! それで私は途中のコンビニで傘を買うよ!」
「それだとおカネがもったいないじゃん。……あ、そうだ! だったら近くの喫茶店に寄り道してもいい?
「い、いいアイデアだと思うけど、食事までご馳走になるのはちょっと……」
「遠慮しないでいいって。身内びいきをするわけじゃないけど、味は保証するよ。それに美味そうに食べてたら、
「じゃ……じゃ、ありがたくご馳走になろうかな……」
「よしっ、決まり! 早速、店に電話をしてみる」
「あ、私も自宅に連絡をしておくね。友達と食事をしてから帰るって」
花火大会が中止になったのにこのまま遅くなると家族が心配するので、私はスマホで家族に連絡を入れることにした。そして外食することと帰宅が遅くなることを伝え、その同意を無事に得る。
彼も
こうして私たちは
雨粒の音楽を奏でる小さな折りたたみ傘。さっきの
私は心なしか彼に体を寄せ、お互いに少しでも濡れないように配慮する。
(つづく……)
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