第85話 敵の強硬策
大声で乱入してきた男は呼吸も整いきらないまま用件を話し始める。
「カザタム周辺に謎の武装勢力が展開しています! その陣容は今まさにこのカザタムへ攻め入ろうとするかのごとく……」
「なんだと!?」
武装勢力って……まさか、トレドル様の手の者?
いや、もしかしたら、豊穣の女神メーテの噂を聞いてその力を横取りしようと集まったチンピラたちかもしれない。
俺はたまらずミリアに抱きかかえられているメーテへと視線を移す。彼女は怯えた様子でミリアの服にしがみついていた。
「メーテ……」
拷問騎士はハッキリと狙いがメーテであると口にした。
あの連中もきっとそうなのだろう。
これは推測だが、カザタムの周辺で展開しているという武装勢力は、拷問騎士が失敗した時に備えてあった奥の手といったところか。
ヤツらからすれば、娘を送り込んでまで手に入れようとした存在。
そう簡単にあきらめるはずがない。
俺は意を決し、困惑するゴンザレス町長へすべてを話した。
もちろん、メーテのことも。
そして――
「俺が彼らと交渉をしてきます」
「こ、交渉だと!?」
それはイチかバチかの賭けだった。
連中の背後にトレドル様が潜んでいるとするなら、この提案に乗ってくるはず。むしろそれが狙いでわざと発見されやすいよう戦力を展開している節がある。
いわばこいつは挑発。
見え透いた煽りだけど……乗っからざるを得ないか。
もし本当にその武装勢力とやらがカザタムに仕掛けてきたらどうなるか。
狙いはあくまでもメーテなのだろうが、他にまったく被害を出さないで済む問題ではなくなるぞ。
――以上の事情から、俺はまず単独での交渉へ乗り出そうと提案する。
だが、これに真っ向から意外な人物が否定する。
「それは賛成できませんわ」
「ミ、ミリア!?」
まさかのミリアからの反対――と、思ったら、どうも違うようだ。
「わたくしたちもともにまいります」
「そうですよ、ソリス様」
「今度はおそばでお守りします」
「みんな……」
アースロード関係者全員で敵陣に乗り込むと提案してくれたのだ。
――どうやら、うちとしてもここが踏ん張りどころになりそうだな。
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