第81話 囚われのソリス
「ぐっ……ここは……」
意識を取り戻した俺が最初に見た光景――それは暗くジメジメとした牢屋であった。
最初は鉄製の柵で閉ざされた牢屋があるぞっていう大雑把な認識だったけど、朦朧とした意識が覚醒してくるにつれて自分自身がその牢屋の内側にいるという信じがたい事実を理解していった。
「ど、どうなっているんだ!?」
昨日までこれからどの商会と契約を結ぼうが悩んでいたはずなのに……あまりの超展開に脳の処理が追いつかない中、遠くからこちらへと迫る足音が。
やがてその音の主は俺が閉じ込められている牢屋の前で立ち止まる。
彼の顔には見覚えがあった。
「やあ、お目覚めかね」
「あ、あなたは……」
騎士団の制服に身を包んだ中年男性は、俺を捉えるためにやってきた三人組のリーダー格を務めていた人物だった。
「申し遅れました。わたくし、レブガン王国騎士団に所属しておりますカイラー・デノグという者です」
それは着ている制服を見れば分かる。
問題はなぜ彼が俺をこの牢屋へ放り込んだか、だ。
「なぜ俺を捕らえたのですか?」
「おや? 自覚がありませんか?」
「自覚も何も……俺は牢屋にぶち込まれるようなことなんて何もしていない」
「果たして本当にそうでしょうか」
勿体ぶった言い方をするカイラーさんだが、どれだけ記憶を辿ってみても思い当たる節はない。
――もしかして、前世の記憶が戻る前に村人たちへひどいことをしていた件か?
それなら思い当たる節だらけだ。
「あなたの罪状ですが……そうですねぇ。とある方の一存とでも言っておきましょうか」
「なっ!?」
一存、だと?
そんなふざけた罪状があってたまるか!
そう憤ったが、この世界ではそれがまかり通るケースもある。何せ貴族っていうとんでもない権力を有した存在がいるわけだからな。
……待てよ。
貴族?
「まさか……」
俺を捕らえるよう命じたのって――トレドル様か!?
だとしたらカイラーさんの言っていた、あのめちゃくちゃな理由にも説明がつく。
豊穣の女神メーテの力を我が物にしようと企むトレドル様がついに本格的な動きを見せてきたってわけか。
「さて、お喋りはこのあたりにしておいて、そろそろ本題へと移りましょうか」
「ほ、本題……?」
「えぇ。ご案内しますよ――私の特製拷問部屋に」
「っ!?」
ご、拷問部屋!?
そこで俺にメーテをあきらめるよう迫るつもりか!?
……まずいことになった。
外の様子が分からない以上、救助を待つというのも危険だな。
もしかしたら、ミリアたちは俺が囚われているということすら知らない可能性もある。
ここは自力でなんとかするしかない。
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