第79話 町長との会談

 昨日までの苦戦が嘘だったかのように、ローウェル地方の野菜を求める人たちが増加。

 しかし、これではパニックになるとゴンザレス町長が仲介役となってくれると立候補してくれた。


 正直、これは助かる提案だ。

 何せ俺たちはこの手の業界に疎い。

 経験も浅いし、元商人だというゴンザレス町長の忠告があればより確かな選択ができるだろう。……ただ、マットの件があった直後でもあるので、情報を鵜呑みにはせずにこちらでも精査するつもりではいる。


 俺たちは町長の家に招かれ、そこでカザタムに所属する商会の特徴を教えてもらう。


「君たちが扱うのは野菜だったな。ならばやはり同じように食品をメインで扱っている商会に絞るというのも手だろう」

「なるほど」


 一理あるな。

 商会にはそれぞれ得意分野があり、魔道具や武器、防具、或いは人材派遣など内容は多岐にわたる。

 ネームバリューだけで選び、ろくに野菜の品質管理ができないような商会では評判が落ちて取引自体がなくなる可能性もあるからな。


 ちなみにフォーグ商会はいろいろと手広くやっていたようだ。

 その中には生鮮食品を扱う部門もあったようで、うまくいっていれば安心して任せられたんだよなぁ……本当に残念だ。


「野菜や畜産物は各商会にとって主力級の商品になっている。そのため得意としているところが多いので選択肢も多くなってくるな。ちなみに君たちとの契約を希望する中で有力な商会に限定すると該当するのは十五件だ」

「そ、そんなにあるんですね……」


 思わずそう口走ったが、宿屋で見た時の熱気からすればだいぶ絞られたと言った方が正しいのかもしれない。


 問題はその十五件の中のどこに任せるか、だ。

 ゴンザレス町長が用意してくれた資料には代表者の名前や過去の実績が並べられているが、これだけで判断はできないと思った俺はそれぞれの商会へ直接足を運び、直に会って話を聞きたいと思った。


 その旨をゴンザレス町長に伝えると、「もっともな意見だ」と賛成してくれた。


 しかし、十五人の商会代表との会談ってなればかなりの時間がかかるな。

 それまでローウェン地方を離れるのはちょっと心配だ。


 ただ、ここが踏ん張りどころというのもまた事実。

 ここはジェニーの使い魔に帰りが遅くなるという内容の手紙を持たせてゼリオル村長へ届けてもらうとしよう。


 さて……一体どんな人たちが待っているのだろうか。

 こっちはこっちでちょっと緊張してきたよ。

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