第77話 思わぬ展開

 翌朝。

 俺たちは喧噪で目を覚ました。


「な、なんだ……?」

「何があったのかしら……」


 同じタイミングで目を覚ましたミリアとともに、何事が起きたのかと部屋の窓からこっそりと外の様子をうかがう。

 すると、そこには信じられない光景が。


「な、なんでこんなに大勢の人が宿屋に!?」


 思わず口に出してしまうほどの衝撃だった。

 その理由は――宿屋の前になぜか長蛇の列ができていたからだ。

 ここが人気の宿屋というのは聞いていたけど、こんな早朝にここまでの数が押し寄せるなんて驚きだな。

 

 ミリアと一緒になって茫然と眺めていたら、部屋のドアをノックする音が。


「ソリス様! ミリア様! 大変です!」


 ドアの向こうにいるのはジェニーのようだ。かなり慌てている様子だけど、間違いなく外の行列と関係があるだろうな。

 俺はドアを開けてジェニーを部屋へと招き入れる。


「どうしたんだ、ジェニー」

「外の光景はご覧になりましたか?」

「あ、ああ、凄い行列だな」

「人気の宿という話は聞いていましたが、ここまでとはさすがに予想外でしたわ」

「いえ、外にいる者たちの目当ては宿ではないんです」

「えっ? そうなのか? じゃあ、一体……」

「おふたりですよ」

「「へっ?」」


 まさかの回答に俺とミリアの声が重なる。

 ……ちょっと待て。

 あのとんでもなく長い行列を構成する人々の目的が俺たち?


「今ロビーでローチたちが説得していますが、ここはおふたりに出ていただかないと収まりそうにありません……」

「それってもしかして……フォーグ商会の件に対するクレーム?」


 俺たちとしては降りかかる火の粉を払ったって認識だが、同業者が騎士団に捕まったことをよく思わないってことか。


 確かに、事件にかかわった俺たちの口からきちんと説明する必要があるな。


 ――と、思っていたのだが、どうも事情は違うらしい。


「クレームではありません。訪れている者たちはぜひお礼が言いたいと」

「お、お礼?」


 なんだか雲行きが変わって来たぞ?


「どうやら最近のフォーグ商会はいろいろと暴走していたようです。他にも恨みを買っていたところがあるようで……それと、収穫された野菜についても話を聞きたいと」

「それはありがたいけど、数が数だけに……」


 そりゃあ、商会と契約を結びたいとは思っていたが、あまりにも数が多すぎる。

 とりあえず、ローチたちが限界らしいのでロビーへ行って事情を説明しないとな。

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