第62話 賑やかな都市
初めてカザタムという町へやってきたが……凄い賑わいだった。
まあ、リーノ村が極端に穏やかで平和な村ってこともあるんだけど、王都にも負けないくらい活気があって人の数も多い。
「さすがは国境付近にあるだけあって人の往来が激しいな」
「迷子にならないよう気をつけないといけませんわね」
今回の遠征もまたいつものメンツ(ジェニー、ローチ、ベック、デビット)で挑んでいるわけだが、これだけ人が多いともっと一緒に連れてきてもよかった気がする。なんというか、数で圧されている感じがするのだ。
あと、こういう場には俺みたいに領主という立場の人間はあまり足を運ばない。
大抵は代理人を用意するものだが、近年ろくな実績のないローウェン地方では門前払いを食らう可能性があるからと父上から伝えられ、出張ってきたのだ。
もっとも、そのアドバイスがなくても俺自身がこのカザタムへとやってきただろう。
個人的にどんな場所か関心もあったしね。
気を取り直して、俺はとある商会の建物へと入る。
名前はフォーグ商会。
実はここの商会代表とは面識があった。
と言っても、幼い頃にとある貴族のパーティーでそこの御子息と意気投合し、名前を憶えていた程度なので向こうはこっちを覚えていないかもしれない。あれから父上と仕事で一緒になったって話も聞かないしな。
まずは受付で代表に会えるかどうか確認。
アポなしではあったが、俺がローウェン地方領主であると告げたらすぐに会ってくれることになった。
この決断力と行動力の高さこそが人気商会となる秘訣なのだろう。
案内された場所は応接室のようで、まずは俺が単独で代表へと会うことに。
現れた代表の姿を見た瞬間――思わず声が出た。
「あ、あれ?」
そこにいたのは髭を蓄えたダンディな紳士ではなく、今の俺とさほど年齢が変わらない爽やかな青年だった。
「お久しぶりです、ソリス様」
「もしかして……マットか?」
「覚えていてくださったのですね。――はい。マット・フォーグです。その節は大変お世話になりました」
深々と頭を下げた青年の名前はマット。
幼い頃にパーティーで意気投合し、一時期よく遊んでいたっけ。
父親の意向で商人となるべく、世界中を旅することになってからは会う機会がなくなってしまったが、まさかこのような形で再会できるとは。
この再会は俺たちにとって追い風になるかもしれない。
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