第60話 盛り上がるリーノ村
グリンハーツ家の動きが不透明で不気味さを残すものの、父上からの協力を取りつけることができた。
こちらからもスミゲルがさまざまな人脈を駆使して調査に乗り出してくれているが、今のところ目立った成果はない。それでも、そう遠くないうちにグリンハーツ家が具体的な動きを見せてくると踏んでいる。
ただ、その日が来るまではローウェル地方の領主としてしっかり役目を果たさなくちゃな。
――というわけで、今日も早朝から村人たちと農作業で汗を流す。
「だんだん暑くなってきたなぁ」
「これからは飲み物の用意もしないといけませんわね」
「あーい!」
ミリアはメーテのお世話があるため、以前のようにあちこちと動き回ることができない。それでも自分がやれる範囲で手伝ってくれているのでありがたい。
メーテもみんなの助けになりたいと頑張ってくれている。
もちろん、危険な目に遭わないようミリアがしっかり見張ってくれていた。
農場の方は今日も絶好調。
ゼリオル村長にはカザタムの件を話したが、あのような大都市で自分たちの育てた野菜が売れるのかどうか不安に感じていた。
味や栄養価に関しては問題ないと思う。
一流商会が契約している農家にも引けを取らないだろう。
問題は……知名度の低さだ。
豊穣の女神メーテの加護がある野菜――と、売り出せば客は飛びつくのだろうが、ただでさえグリンハーツ家とそのメーテをめぐって水面下のやりとりが激化しているのにそれを焚きつける行為になるからな。
メーテの名前が使えないとなると、あとは商会へのアピール次第になる。
カザタムへと向かう前にその辺を入念に準備しておかないと。
「領主様! こんなに大きなトウモロコシがとれたよ!」
「こっちのトマトだってデカいぞ!」
「いや、俺のピーマンの方が凄ぇぞ!」
「ははは、どれもおいしそうだな」
村の子どもたちも顔を泥だらけにしながら積極的に農作業へ協力してくれている。
彼らのためにも、カザタムでの交渉はなんとしても成功させないと……この村で作った野菜が評判となれば人口も増えるし、活気も増すだろう。
――ただ、あまりのんびりとは構えていられない。
いつグリンハーツ家が動き出すか分からないからな。
よっしゃ。
気合入れて準備を進めていくか!
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