第54話 ミリアを守るために

 グリンハーツ家はメーテを狙っており、ミリアはその調査のために送り込むという形で俺と婚約した。


 だが、実際にメーテと出会い、さらには村人たちとの交流を通して父親や兄のやろうとしていることが間違いであると確信し、壮絶な覚悟を持って真実を打ち明けてくれた。


 この事実はスミゲル、ジェニー、ローチたちにも伝えられる。

 うちの関係者は全員揃って「信じられない」といった反応を示していたが、グリンハーツ家から追い出されたとしてもこの地に暮らす人々とメーテを守りたいという強い気持ちがあるというのが理解してもらえたので、特に反感などはなかった。


 むしろ、これまで父親や兄にひどい仕打ちをされてきた彼女に同情する声が続出。

 これにはミリア自身も驚いていた。


 罵詈雑言を浴びせられ、放り出されるかもしれないと覚悟していたので、みんなから受け入れられる言葉を送られたので感極まってしまい、とうとう泣き出してしまった。


 ローエン地方へやってきてからの彼女を知る者なら、ここでの生活を通してどんな人物か把握しているため、彼女が父親や兄の願いをすすんで聞き入れてこの地へとやってきたわけではないと理解している。


 ……だから、グリンハーツ家への不信感が高まっていた。


「ソリス様、少しよろしいでしょうか」

「スミゲル……俺もあなたを呼ぼうと思っていた」


 すべてを打ち明けて肩の荷が下りたミリアはジェニーやローチたちと一緒に庭でお茶会を開いている。もちろん、リタやメーテもそちらへ参加していた。


 一方、俺はまずスミゲルとともに今後について話し合った。


「トレドル様にはメーテの存在をすでに知られてしまっている。……グリンハーツ家がその力を手に入れようと強引な手に売ってくる可能性があると思うか?」

「大いにあるでしょうな」


 スミゲルはだいぶ言葉を選んでいるようだが……そりゃそうだよな。

 いくらアースロード家が多くの農地を有する豪農であっても、ちょっと裕福な一般人程度の認識だろうし、国家ぐるみで潰しにかかろうと思えば容易くできてしまう。


 残った土地は周辺の領主に明け渡すだけでいいのだから。


「何か対抗手段を考えなくては……このままだと一方的にやられたままになってしまう」

「私は今後もグリンハーツ家への調査を続けます。もしかしたら、彼らの魔の手から逃げられるヒントが得られるかもしれませんので」

「悪いが、そうしてくれるか」

「もちろんです。――私もミリア様にはこの地へ残っていただきたいですからな」


 最後にそう告げると、スミゲルは早速行動を開始する。


 ……俺も負けてはいられないな。


 やれる範囲のことを全部やって立ち向かわないと。

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