第53話 グリンハーツ家の狙い
なぜグリンハーツ家がメーテを狙うのか。
その真相に迫ろうとした時、声をあげたのはリタではなくミリアだった。
「やはり……これ以上は隠しきれませんわね」
「ミ、ミリア」
力なくそう告げたミリア。
表情はどこか虚ろで、心ここにあらずって感じがした。
それでも俺にきちんと説明をしなければいけないと思ったのか、ミリアはゆっくりとこれまでの経緯を語り始めた。
「グリンハーツ家がメーテの力を使って何をしようとしているのか……残念ながら、私にはその全容を伝えられていないので教えられないのですが、メーテと仲良くし、懐かせておけとは命じられましたわ」
「メーテと仲良くって……」
「恐らくはここから連れ出しやすいようにということでしょう」
……なんてこった。
ひょっとして、原作のソリス・アースロードがめちゃくちゃなヤツになった一番の要因はこれなのかもしれないな。
――いや、それ以前からだいぶおかしなヤツではあったけどさ。
どうやって声をかけていいのか分からずにあたふたとしていたら、さらにミリアが自身の気持ちを吐露する。
「ですが信じてください。今はもうお父様やお兄様の言うことを聞こうとは思っていませんので」
「へっ?」
思わず間の抜けた声が漏れ出た。
「調子のいいように聞こえるかもしれませんが、わたくしはここでの生活を経て本当に大切なモノに気づかされました。優しいリーノ村の人たちに生まれたばかりのメーテ……今はそれを守りたいと心から思っていますわ」
「ミリア……」
――彼女は嘘をついていない。
何の根拠もないけど、なぜか断言できる。
きっと、表向きだけの関係だったとはいえ、一緒に暮らしているうちにそういうのを察せられるようになったんだろうな。
問題は……やはり彼女の家族だ。
ミリア、さらにはリタまでもがこちら側としてメーテとローエン地方を守りたいと言ってくれた。
俺はふたりの意志を汲み、これからもここで一緒に暮らしてほしいとお願いする。
「い、いいんですの?」
「当り前じゃないか。むしろそれはこちらのセリフだよ。リーノ村やメーテを守るということは、家族と敵対関係になってしまうかもしれないんだぞ?」
「覚悟の上ですわ」
「私はどこまでもお嬢様についていくつもりでいますので」
どうやら、ふたりの気持ちは揺るがないらしい。
そうと決まったら、何か対策を練らなくちゃな。
もちろん――みんなで!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます