第51話 リタからの報告

 トレドル様が帰ってからも、ミリアの様子は変わらなかった。

 落ち着きがなく、同じ場所をずっとウロウロしている。


 何度か声をかけようとしたが、どうにもタイミングが合わなくて――と、困っていたら思わぬ人から名前を呼ばれる。


「少しよろしいでしょうか、ソリス様」

「リタ? ちょうどよか――いや、それだと変だな」

「いえ、あなたの気持ちはよく分かります」


 珍しい。

 ミリアの専属メイドでほぼ彼女にベッタリだったリタが俺をフォローするような発言をするとは。

 ……まあ、俺よりも長くミリアを見ていたリタからすれば、トレドル様との関係性についても知っているだろうからな。

 さっきの言葉の真意は――


「あの方は……メーテ様を狙っています」

「やはりか」

「御存知だったのですか?」

「さっきの態度を見ていたら大体察しがつくさ。――ただ、気になる点がある」

「まあ、状況からして気にならないところの方が少ないですからね」


 その通りだ。

 用事のついでに立ち寄ったなんて見え透いた嘘をついてまで、なぜトレドル様はこのローエン地方へと足を運んだのか。


 リタ曰く、彼はメーテを狙っているらしいが……目当ては女神の力だろうな。


「それにしても、どうしてトレドル様はメーテを?」

「あの方は幼い頃から豊穣の女神に関心がありました」

「えっ? そんな昔から?」


 てっきり妹の結婚をきっかけにその手の情報を入手し、あわよくば手に入れて好き勝手に使ってやろうなんて考えでも持っているんじゃないかって邪推したが、単純に小さい頃から関心があったから、時間を見つけてきたのか?


 ……まさかな。


 それならミリアがあそこまで動揺している理由が見えてこない。


「リタ、答えにくいかもしれないが……ミリアとトレドル様の関係って――」

「最悪です」


 食い気味に答えが飛んできた。

 というか、正直にぶっちゃけすぎだろ。


「き、聞いておいてなんだが……そんなにあっさり答えてしまっていいのか?」

「問題はないと判断しました。――ソリス様なら」

「俺なら?」

「あなたはミリア様との未来を真剣に考えていらっしゃるようですし。まだ出会って数日ではありますが、信頼できる方というのは間違いないはず」

「リ、リタ……」


 まさか彼女にそう思われていたなんて。

 これは……新たな事実が発覚しそうだな。

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