第34話 質問攻め

「牧場か……」


 そう呟くと、フーバさんは考え込むように俯いた。

 何か引っかかるところがあるのか……そう尋ねようとしたのだが、それよりも先に彼の方が口を開いた。


「領主殿は……どんな動物を育てようと考えておるのじゃ?」

「えっ?」

「古い馴染みの紹介とあっては無下には扱えん」


 仮に俺が単独でお願いに来たとしても、その時は断るってことか。

 あくまでもゼリオル村長の紹介だから話を聞く、と。


 それだけ彼とゼリオル村長の間には固い絆があるようだ。


 ……そういえば、昔の俺はそんな村長にひどいことをしてきたんだよな。

 よく紹介をしてくれたよ。


「あと、ゼリオルは昔からお人好しで損ばかりしていたが、人を見る目だけはあったからな。そんなあいつが人嫌いの俺のところへ送り込んでくるほどだから、相当気に入られているようだな」

「そ、そうなんですね」


 ゼリオル村長……以前、あんなにひどいことをした俺をそこまで……ありがたい限りだ。

 その期待に応えるためにも、リーノ村牧場の件は成功させないと。


「で、どうなんだ? 何かプランはあるのか?」

「正直、まだほとんど白紙に近いのですが、広大な土地を有効活用するなら牛がいいかなと。あとは鶏とか」

「牛、か。専用の施設が必要になるし、なかなか難しいな。

「施設ですか……」

「鶏の方も鶏舎があると育てやすい」

「なるほど」


 牛舎と鶏舎。

 畜産素人である俺からすれば、漠然とした外観くらいしか想像できない。

 

 どんな構造をしているのか。

 規模をどうするのか。


 彼に聞きたいことはまだ山ほどある。


「……まだまだ話し足りないって顔だな」

「っ! わ、分かっちゃいます?」

「領主殿の熱意には応えてやりたいが、今日はもう遅い。だが、さっきも言ったように全員を泊めてやれるほど屋内にスペースがなくてな」

「その点につきましてはご心配無用」


 そう切り出したのはジェニーだった。

 彼女の裏ではテント道具一式を抱えたローチの姿が。


「自分たちの寝床は自分たちで確保できるよう準備をしてまいりました」

「いいねぇ! 騎士団時代を思い出すぜ!」


 なぜかやたらテンションの高いローチはともかくとして……とりあえず寝る場所に関しては問題ないことがこれで証明できた。


「今日はじっくりお話をうかがっても?」

「いいだろう。長くなるぞ?」

「望むところです」


 さっきに比べたらだいぶ話しやすくなったな。





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