第33話 協力要請
リーノ村に牧場を作るという計画を実行させるためには、どうしても専門的な知識のある方に協力してもらいたい。
そんな俺の考えを聞いたゼリオル村長が推薦してくれたのがここに住むという人物なのだが……村長の話を聞く限り、なかなかクセが強そうなので心配だ。
家にはいるようなのでノックして確認をしてみるが――返事はない。
「いないのでしょうか?」
「だが、室内には明かりがあるぞ」
ジェニーとローチは不思議そうに小屋を眺めている。
失礼だけど、あまり大きな家というわけではないのでこちらの声は聞こえているはずなのだが。
しばらく待っていると、ゆっくりと動く足音が。
その直後、ドアがゆっくりと開いた。
「なんじゃ、こんなに大勢で。お主らどこのもんじゃ?」
不機嫌そうに出てきたのは老人だった。
白髪に白髭をたくわえた仙人っぽい見た目をした男性だ。
「迷い込んだ旅人というわけでもなさそうじゃが……悪いが、この家にこれだけの数の人間を泊められるスペースはないぞ」
「いえ、我々はあなたに用があって来たんです」
「ワシに?」
……なんか、めちゃくちゃ警戒されているな。
でもまぁ、これは普通の反応かも。
いきなり顔も知らない人が複数人も押しかけてきたら、そりゃ警戒もするってもんだ。
とりあえず、紹介をされてきたってことは伝えておかないと。
「リーノ村に住むゼリオル村長から紹介されてここまで来ました。――フーバさんですよね?」
「っ! ゼリオルだと……?」
自分の名前を言われ、さらに知っている人物の名前っまで出てきたことで、彼の警戒心は少し緩まったようだ。
ドアを完全に開けて外へと出てきたフーバさんは、俺たちを見回してから大きく息を吐いた。
「あの男が何を言ったか知らんが、ワシは何もできん男だぞ」
「実は牧場経営のことについてお話を聞きに来たんです」
「っ!?」
俺が牧場の話題に触れると、フーバさんの瞳はカッと見開かれた。
「牧場……そんな話を聞いてどうする?」
「紹介が遅れましたが、俺はこのローエン地方の新しい領主となったソリス・アースロードです」
「アースロード? グランの倅か」
む?
フーバさんは父上を知っているのか?
それに、口ぶりからすると前に会っているような感じがする。
もしかして、アースロード家と何か因縁があるのか?
「父を知っているのですか?」
「昔いろいろとあってな」
そう語った彼の表情は――どこか嬉しそうに映った。
もしかして……話を聞いてもらえそうかな?
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