第32話 牧場経営
ローエン地方で牧場をやりたい。
そんな思いから、俺はリーノ村のゼリオル村長に協力を要請。
彼自身は牧場経営に関するノウハウはないものの、友人に詳しい者がいるからと紹介を受けた――が、どうもその人物はなかなかクセの強い人らしい。
ただ、打ち解けられたら心強い味方となってくれるはずとも村長は言っていたな。
「どういう人物なのでしょうか……」
「うーん、想像もつかないけど、一筋縄ではいかないっていうのは分かるかな」
ゼリオル村長の反応を見る限り、恐らく「人間不信」になっているパターンではないかと俺は予想していた。
勝手な憶測なので見当はずれかもしれないが、人里離れた山間に動物たちとだけ暮らしているというくらいだからなぁ。
前世でも、こういう人をテレビの特集で見かけたことあるし。
ともかく、会ってみないことには何も始まらないか。
その人物が暮らしているのは幸いにも同じローエン地方だった。
しかし、場所は村から遠く、馬車を使って丸一日かかる。
「念のため着替えなどを用意しておいて正解でしたね」
「そうだな。次回来る時はもう少し準備をしておかないと」
護衛役を務めるジェニーの言うように、もしかしたらと思って最低限の準備だけしてきたのだが、そのおかげで助かった。
この辺は屋敷最年長のスミゲルでさえ来たことがないという、まさに未踏の地。
周囲の気配から、いつモンスターが襲ってきてもおかしくはないのだが……よくこんな場所で長年ひとり暮らしができたもんだと変に感心してしまう。
「ゼリオル村長からいただいた地図によると、この辺りに家があるはずなのですが……」
「もしかして、あれじゃありませんの?」
ローチの言葉に対して真っ先に反応したミリア。
彼女の指さす先には確かに木造の小屋があり、淡いランプの光が室内を照らしている。
どうやら、あそこに誰かがいるというのは間違いないらしい。
「あそこか……よし、いこう」
俺はみんなにそう呼びかけ、馬車を向かわせる。
果たして、どんな人なのか……ここへ来てちょっと緊張してきたよ。
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