第31話 土地の有効活用
翌日。
俺は早朝からリーノ村を訪れていた。
もっとも忙しい朝の農作業を手伝い、それが終わったら先日話題にあがった手をつけられていない広大な土地を視察する。
「ふむふむ。これくらいの面積があれば問題ないかな」
「一体何をしようと?」
メーテを抱っこしながら尋ねたのは同行している婚約者のミリアだった。
そんなに彼女に、俺は堂々と言い放つ。
「ここに牧場を作ろうと思う」
「ぼ、牧場!?」
さすがに驚いたようだ。
「で、ですが、牧場を運営するノウハウなんて……」
「だから経験のある人を雇いたいと思っているんだ。もちろん、父上やゼリオル村長にも相談してみるつもりだけどね」
「なるほど……それが成功すれば産業の拡大につながるのは間違いありませんわね」
「だろう? せっかくこれだけ広く土地が空いているんだから、有効活用しないと」
問題は山積みだけど、乗り越えた先にあるリターンはかなり大きいと睨んでいた。気候的にも動物の飼育には向いていると思うし、やってやれないことはないはず。
早速、俺たちはリーノ村へと戻ってゼリオル村長に話を持っていった。
「牧場ですか」
急な話ということもあって最初は戸惑っていたゼリオル村長だが、次第に状況を理解していくと表情は柔らかくなっていった。
「よい案だと思います。難点は……先ほどソリス様がご指摘なされた通り、牧場経営についてのノウハウがない点ですな」
「そこでなんだが、もしゼリオル村長の知り合いに詳しい人などいれば紹介していただきたいと思って」
「なるほど……」
顔が広いゼリオル村長ならばと期待して質問してみたが、その結果は――
「……ひとりだけおりますな」
見事的中。
早速その人の居場所を教えてもらおうとするのだが、ここでゼリオル村長の表情が急に曇り出した。
もしかして、何か問題のある人なのか?
「何かありましたか?」
「いや……その男はなかなか気難しくてですなぁ……素直に協力をしてくれるかどうか」
そっち方向の心配だったか。
確かに、トラブルメーカーみたいなタイプだったらかえってマイナス要素にもなりかねないが――ここは一度会って話を聞くだけでもしてみたいところだ。
俺はゼリオル村長から男の居場所を聞き出し、そこへ向かうことにしたのだった。
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