第30話 閃き
ローエン地方を発展させるための新しい産業。
ベースはやっぱりノウハウのある農業ってことになるんだろうけど、新しいアプローチも考えていきたい。
「うーん……どうしたものか」
自室に戻って考え込んでいると、ドアをノックする音が。
「はい」
「わたくしですわ」
「ミリア? どうしたんだ?」
「リタがお茶を淹れてくれたのですが、一緒に飲みません?」
「それはありがたいな。すぐ行くよ」
ちょうどいい息抜きになるなと思い、俺は部屋を出た。
ミリアと一緒に別室へと来ると、そこではジェニーとローチがメーテと一緒にボールで遊んでいた。
そのメーテは俺とミリアが入ってきたことに気がつくと大事そうに抱えていたボールを放り投げ、小さな足を必死に動かしてこちらへと駆け寄ってくる。
「あぁ……やはり親子の絆には勝てませんでしたか……」
「そう落ち込むな、ジェニー。これが正しい姿なのだ」
「いや、本当の親子というわけでは――」
言いかけてふと視線を落とすと、何やらメーテは不安そうな表情を浮かべている。
どこまでの会話の意味を理解しているか分からないが、ここで不用意な発言をするべきではないだろう。
「メーテは大事な家族だよ」
「っ!」
そう言って頭を撫でると、メーテは嬉しそうに目を細めた。
豊穣の女神とかそういうのを抜きにしても、今やメーテの存在はこの屋敷とリーノ家にとって大きなものとなっている。
大事に育てていかないとな。
「さあ、お茶にしましょう。メーテはまだ飲めませんので、今リタがミルクを持ってきてくれますわ」
「あーい!」
ミルクと聞いて大喜びのメーテ。
無邪気な様子を眺めていると、本当に女神なのかって疑ってしまうな。
――と、その時、俺の脳裏にある閃きが稲妻のごとく走った。
「ミルク……牛乳……それだぁ!」
思わず叫んでしまい、周りのみんなから注目を浴びてしまう。
「ど、どうかしたのですか、ソリス様」
「ようやく名案が浮かんだんだ!」
「名案……ですか?」
キョトンとした顔つきのジェニー。
それは彼女だけでなく、この場にいる全員が同じだった。
だが、俺だけは確信している。
ローエン地方復活計画はまずその第一歩を踏み出すのだ!
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