第35話 楽しい食卓

 牧場に関してまだまだ話したいことがたくさん俺の気持ちを汲み取ってくれたフーバさん。

 お礼もかねて、夕食は俺たちで振る舞うこととなった。


 俺やミリアも不慣れながらジェニーたちを手伝い、フーバさんが採ってきたという山菜も使った料理を完成させていった。


「ほぉ、さすがにうまいな」


 口に入れた瞬間、フーバさんの口から嬉しい言葉が飛び出す。

 その反応に安堵しつつ、俺たちも食べようとそれぞれ席について食事を開始。


 ちなみに、小屋の中では全員揃って食べられないからと、屋外に特別席を設けてちょっとした食事会みたいな格好となっている。


「メーテ、熱いから気をつけてね」

「あいあーい!」


 ふーふーと冷ましながらメーテに料理を食べさせてあげているミリア。

 なんというか、もう普通の親子にしか見えないな。

 

 ジェニーととローチがそんな光景を温かな眼差しで見守っている中、フーバさんは思わず笑みをこぼした。


「ふふっ、こんなに賑やかな食事は冒険者パーティーに所属していた時以来じゃな」

「フーバさんって、元冒険者なんですか?」

「まあな。ゼリオルと同じパーティーだったんじゃ」

「ゼリオルさんも!?」


 サラッと凄い事実が発覚したな。

 これはジェニーやローチも知らなかった事実らしい。


「これでも業界ではそこそこ名の売れたコンビじゃったよ」

「そうなんですか!?」

「ははっ、もう何十年も前の話だよ」


 不意に、フーバさんの表情が暗くなる。


「ただ、ワシもヤツも当時のリーダーに裏切られ、追放処分を受けた。自分よりも他の仲間の信頼が厚いからという嫉妬心から来たもののようじゃったが、そんな浅はかな思考はあっさりと露呈し、結局パーティーは消滅。ワシらはそれぞれ別の道を歩むことにした」


 ……なるほど。

 彼が人間嫌いになった原因はそこにあったのか。


「ゼリオルはできた男だからすぐに他のパーティーにも馴染んでいったが、ワシはヤツのように吹っ切ることができなかった」

「それでここで生活を……」

「昔は動物たちの世話をしながら暮らしていたよ。不便さを感じることもあるが、誰とも接触のない生活は煩わしくなくてよいと思っていた――が、領主殿たちが訪ねてきてくれたおかげでその認識も変わりつつある」


 そう告げると、フーバさんはゆっくりと立ち上がった。


「見てみたいのぅ……そのリーノ村とやらを」

「っ! ぜひ! 一緒に行きましょう!」


 こうして、フーバさんのリーノ村訪問が決定。

 きっとゼリオル村長も喜ぶぞ!





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