第28話 アドバイス
父上との会話は領地運営の今後の見通しなど、グリンハーツ家以外の話題に関しては問題なく終了。
――だが、俺はここで父上に質問を投げかけた。
「父上」
「なんだ?」
「父上がローエン地方の領主だったとして、農業をさらに発展させるためにどのような手を打ちますか?」
「ほぉ……私にアドバイスを求めるか」
「えっ?」
俺としては自然な流れだと思ったんだけど、どうも父上には新鮮に映ったらしい。
その理由は……たぶんアレだな。
「かつておまえは『父上のアドバイスなど不要! あの地は俺の手で発展させてみせる』と豪語しておったが」
やっぱり……ろくでもないこと言ってやがったな、ソリス・アースロード(覚醒前)め。
「申し訳ありません。実際に領地運営をやってみていろいろと気づかされました……己の浅はかな言動の数々も、今となっては目を背けたくなるような恥ずべきものであったと猛省しております」
「よい。過ちに気づいて乗り越えようとする気概があるのなら、おまえはまだ成長できる」
今回もまた父上の寛大さに助けられた。
こんな父親がいてなんであそこまで捻くれた性格になったのか……甚だ疑問だ。
「さて、本題の発展についてだが、やはり基本となるのは産業の成長だろう」
「産業の成長……」
「これに関してはおまえの目で確かめ、そして考えろ。この見極めが領主としてもっとも必要となる資質だ。私はおまえにその力が備わっていると思っている」
「父上……」
凄く期待をしてくれているというのが伝わってくる。
そんな父上はおもむろに書斎の本棚へと手を伸ばし、そこから一冊の本を取り出して俺へと手渡す。
「今のおまえならこいつも力になってくれるだろう」
「こ、これは?」
「地属性魔法に関する魔導書だ」
「魔導書……」
「農業を主要産業としている領地を持つ者の中にはこの地属性魔法を使って農業を手助けするケースもある。おまえは幼い頃に地属性と診断されているし、専属魔法使いのジェニーから教わればきっと使いこなせるはずだ」
「ありがとうございます、父上」
父上の話を聞いていて思い出した。
俺の魔法属性は【地】――そして、領地へと旅立つ前に同じ本を渡されたが、あの時の俺はそれを「必要ない」と突っぱねた。
魔法を覚えるのが面倒だったのと、領民の問題は領民たちで解決しろっていうのが以前のソリスの考え方だったからな。
――けど、今は違う。
ありがたく使わせてもらうとしよう。
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