第26話 報告へ

 久しぶりに訪れたローエン地方の大豊作。

 リーノ村の人たちは今日も朝から大騒ぎをしながら収穫に追われていた。


 俺はというと、昨日の段階で父上の指定した収穫量に到達したため、アースロード家の屋敷へ出向いて報告をするつもりだ。


 さらに改めて父上に挨拶をしたいというミリアからの要望により、彼女も同行する。

 一方、豊穣の女神メーテのお世話はうちのメイドたちにお願いするつもりなのだが……メーテはすっかり俺とミリアを気に入ってしまったらしく、外出しようとするとぐずってしまいひと騒動。


 なんとかなだめて家を出たのだが、心配なのは農作物への影響だ。


 昨日、メーテは秘められた魔力でローエン地方の大地を一瞬にしてよみがえらせた。


 あの時は気持ちが高ぶっていたというか、テンション高めだったのだが、今みたいに気持ちが下がった時は逆に悪影響が出るんじゃないかって心配だった。


 念のため、馬車の御者を務めるスミゲルに農場の前を通るようにしてもらってチェックをしたが、特に異常もないようで村人たちが元気よく働いていた。


「何もないようでひと安心かな」

「けど、だからといって気を緩めるわけにはいきませんわ」

「もちろん」


 昨夜、うちの専属魔法使いであるジェニーによる魔力診断でメーテに関する情報がいくつか判明した。


 その中で一番考慮しなくレはならないと感じたのは、魔力の不安定さだった。


 幼さゆえに魔力の制御がうまくできていないとジェニーは分析。


 農場が豊かになったのは間違いなく彼女の力ではあるが、今後安定的にそれが実現できるかどうかは分からないと彼女は真面目な顔つきで語った。


「あの子ばかりに頼るわけにはいかないな……」


 確かにメーテの力は素晴らしい。

 このままならローエンの地は以前のような不作知らずのまさに【豊饒の大地】として再び名を馳せるだろう。


 だが、少なからずメーテの負担になっているのもまた事実。


 もうちょっと成長すれば状況も変わってくるのだろうが……当面の間は気をつけておかないとな。


 あと問題なのは――ガチガチに緊張しているミリアくらいか。


「大丈夫ですか、ミリア様」

「へ、平気ですわ」


 声が上ずっているなぁ。

 リタも心配そうだ。


 しかし、立場的には貴族であるミリアの実家の方が圧倒的に上なんだけど……まあ、真面目な彼女の性格を考えたら、あれくらい緊張するのもなんだか頷ける。


 それくらい真剣に考えてくれているってことだしな。


 いろんな思いを乗せた馬車は真っ直ぐアースロード家の屋敷を目指して進むのだった。

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