第25話 忙しかった一日の終わり
メーテの力の影響か、一瞬にして大豊作となったリーノ村の農場。
村人たちは大喜びで収穫に勤しみ、俺やミリア、さらには屋敷中の人たちも力を合わせて作業に没頭。
おかげで半分以上を収穫し終えることができた。
「そろそろ暗くなってきたし、続きは明日にしようか」
照明施設でもあれば続行できるのだろうが、さすがにこの世界でそれを望むのは難しいか。
それでもかなりの量が収穫できたので早速父上へ報告を入れよう。
これもすべてはメーテのおかげ。
改めて褒めようとしたのだが、彼女はミリアに抱かれて静かな寝息を立てていた。
「どうやらわたくしたちが作業中にまた眠ってしまったみたいですわ」
「そうか……」
なんとなくだが、メーテの顔つきが疲れているように映った。
さっきは突然の事態に驚きと喜びが合わさって冷静さを欠いていたが……よくよく考えたらとんでもないことをしたんだよな、メーテは。
おまけにあれだけ大規模な魔法を使用したとなれば、かなりの量の魔力を消費したはず。
女神ではあるがまだ子どもだし、そもそも魔力が枯渇したのが原因で今みたいな幼い姿へと変貌してしまったのだ。
今の状態が万全であるとは言いがたい。
あまり無茶をさせてすぎると、もしかしたら今度は幼児化ってくらいじゃ済まない事態になってしまうかもしれないという危険性があった。
「豊穣の女神メーテ……彼女に関する情報があまりにも不足しているな」
この事実は重くのしかかってくる。
今のところは【豊饒の大地】と呼ばれていた頃に戻ってくれたようだが、これがいつまでもつか不透明だし、このままメーテ頼りになっていくのもよろしくない。
俺たちは俺たちでしっかりと農業をやっていこう。
「ミリア、そろそろ帰ろうと思うんだけど……大丈夫か?」
「この子はぐっすり眠っていますから、問題ありませんわ」
そんな会話をしていると、何やら視線を感じた。
振り返ると、ジェニーをはじめ多くの人たちがこちらをニヤニヤしながら見つめている。
「な、何?」
「いえ、そうしているとまるでおふたりの本当のお子さんのように思えて」
「「っ!?」」
ジェニーの言葉を聞いた直後、俺たちは互いに顔を見合わせる。
確かにこの状況……そう見えなくもない!
とはいえ、すぐに否定するのもなんだかちょっと変な感じだったのでしどろもどろになってしまう。
……まったく。
今日は本当に変な汗をかく日だなぁ。
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