第24話 よみがえる豊饒の大地
野菜の収穫が失敗に終わり、荒野のようになっていた広大な農場。
しかし、豊穣の女神メーテはここで奇跡を起こす。
何もなく、ただただ土色が広がっていた大地は緑色へと変わり、育ちきらなかった野菜たちは生まれ変わったように瑞々しい姿を見せていた。
「こ、これが……豊穣の女神の力……」
信じられない光景を目の当たりにした俺たちは茫然とその場に立ち尽くしていた。
ただひとり、メーテだけはこれが当たり前の結果だと言わんばかりにキャッキャとはしゃいでいる。
その様子からも、やはりこれは彼女の力がもたらした奇跡なのだと理解した。
「ローエン地方が【豊饒の大地】と呼ばれていたのは、やっぱり彼女の力があったからか」
「なら、これからは問題なく農作業ができるのではなくて?」
驚きつつも笑顔を見せるミリアが言うように、メーテの女神としての力が戻ったというなら今後は何も心配いらない。
全盛期の頃のように、今後は豊作に期待が持てる――といいのだが、まだ楽観的にはなれないかな。
「確かにこれほどの魔力を持っているのは凄いけど……今後も同じように力が使えるかどうかは分からない」
「そ、そうですわね」
俺の言葉を受けてハッとなったミリア。
浮かれたい気持ちはよく分かるが、ここは気持ちを引き締めないとな。
――とはいえ、まずはよくやってくれたメーテを褒めておかないと。
「よくやってくれたよ、メーテ」
「あいあーい!」
優しく頭を撫でてやると、メーテはとても嬉しそうに声をあげた。
正直、女神様を相手にこういう行為は大丈夫なのかって不安にもなるけど、今はまだ小さい子どもだからセーフ……で、いいよな?
本人も嫌がっている素振りはないから大丈夫ってことにしておこう。
一方、緑豊かな農場を目の当たりにして感極まっているのはリーノ村の人たちだ。
「す、素晴らしい!」
「豊かな大地が戻ってきた!」
「収穫だ! 収穫を急げ!」
「これなら領主様の希望する量に届くぞ!」
そうだった。
すっかり忘れていたけど、収穫した野菜は父上に納めなくてはいけなかったのだ。
課せられたノルマ達成は絶望的になりつつあったから、ここでそれを挽回できるのは非常にありがたい。
「メーテはまさにローエン地方の救世主だな」
「ふふふ、そうですわね」
「あい?」
「みんなあなたを褒められているんですのよ」
「あーい!」
どこまで言葉を理解しているか分からないが、周りのみんなが嬉しそうにしているのを見て本人も満面の笑顔だ。
さて、これから村をあげて収穫祭りだ。
ひとつも無駄にせず、しっかり集めていかなくちゃな。
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