第23話 女神の力
森の中で出会った小さな子ども。
それがなんと豊穣の女神メーテである可能性が高いっていうんだから驚きだ。
もちろん、それが事実であるかどうかは分からないのでこれから調査をする必要はあるのだろうけど……限りなく事実に近いんじゃないかなぁとは思っている。
かつてこのローエン地方が【豊饒の大地】と呼ばれていた裏には女神様の力があったと見て間違いないだろう。
ただ、今は普通の子どもで、帰りはミリアの手に抱かれて移動したのだが、途中でまた眠くなってしまったのか再び穏やかな寝息を立てている。
「どう見ても普通の子どもだよなぁ」
「私にもそうとしか見えませんね」
「同じく」
スミゲルもローチも、あの子から何か特別な気配というのを感じていなかった――が、ただひとり、魔法に精通しているジェニーだけは違った。
「確かに凄い魔力があるというわけではないようですが……それでも私はあの子が普通の子どもとは思えません」
ハッキリと言い切ったな。
まあ、そうでなければあんなでっかい蕾の中で優雅に眠っている説明にはならないか。
いずれにせよ、問題はあの子をこれからどうするかという点だ。
これについてはミリアからある提案がもたらされる。
「ソリス……わたくしたちで育ててみませんか?」
「えっ!?」
思わず変な声が出た。
いや、俺としてもそうした方がいいんじゃないかなとは思っていたのだけど……まさかミリアも同じような考えを持っていたとは驚いた。
この提案は他のみんなからも賛成の声があがり、帰り道は異様な盛り上がりを見せる。
「女神様の子育てですか。これは責任重大ですな」
「しかし、育て方次第ではローエン地方がよみがえるかもしれませんぞ」
「逆に失敗したら……」
「それは想像したくないな」
さまざまな意見が飛び交う中、気がつくと森を抜けて農場近くを歩いていた。
すると、ここで突然メーテが目を覚ます。
「あら、起こしてしまいましたか」
うるさくしすぎてしまったと猛省する俺たちだったが、メーテはジッと荒れ果てた農場を見つめ続けるとおもむろに右手をあげた。
「? どうかしたのか?」
「あーい!」
突然叫んだかと思うと、激しい閃光が。
眩しさに目を閉じていた俺たち。
やがて光が消えたことに気づいてゆっくりと目を開く――と、そこには信じられない光景が広がっていた。
「の、農場が!?」
たまらず俺は叫ぶ。
これが……奇跡ってヤツなのか?
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