第22話 お目覚め
「くあぁ~……」
大きくあくびをし、目をこする寝起きの女神様。
それからキョロキョロと辺りを見回す。
「「「「「ほああああああああああっ!!」」」」」
メーテが目を覚ましたと知った途端、魔猿たちの雄叫びが一層強くなった。
「あいつら……メーテが目覚めるのを待っていたのか……?」
ここに集結していたのは蕾状態のメーテを守るため?
つい最近までここにはバカデカいイノシシがいたし、俺たちに対しても週警戒をしていた。
ただ、こちらに敵意がないというのを理解したのか結局襲ってくることはなかったな。
さて、そんな彼らも注目する豊穣の女神メーテだが、ジーッとこちらを見つめたまま動かなくなってしまった。
その目は……言い方はちょっと悪いけど、品定めをしているように映った。
敵か味方か。
危害を加える者かそうでないか。
見極めるために忙しなく首を動かし、やがてニパッと笑顔を向ける。
これがまた強烈に可愛い笑顔で、居合わせた者たちを魅了した。
「な、なんと愛らしい……」
「それに神々しさもある……」
「まさに女神様と呼ぶに相応しい……」
神通力とでも言えばいいのか。
中には祈りを捧げる者まで出る始末。
やはりこの子は女神なのか……そんな考えが脳裏をよぎると同時に、いつの間にかすぐ近くまで距離を詰めていた魔猿たちが視界に入った。
彼ら先ほどの興奮が嘘のように落ち着いていた。
先頭に立つのは周りに比べてひと際大きな魔猿で、恐らくこいつが群れのボスだろう。
そいつは真っ赤な瞳をこちらへ向けながらこちらへとさらに接近し、メーテの姿を確認すると膝をついて頭を下げる。
新たな女神誕生の瞬間を祝福しているようだ。
「でも、これからどうします? この子を森へ置いていくのは少し不安なのですが」
「うーん……女神様なら大丈夫とは思うけど、やっぱり心配だよなぁ」
ミリアの専属メイドであるリタの言うように、いくら女神さまと言っても見た目は小さな子どもなのだ。
とりあえず、ダメもとで聞いてみるか。
「あのぉ、女神様?」
「?」
俺が声をかけると、不思議そうな表情で振り返る。
その仕草も可愛らしくて一瞬息が止まったが……なんとか正気を取り戻し続けた。
「俺たちと一緒に来るかい?」
「あい!」
元気よく返事をする女神様。
どうやら一緒に来る気はあるようだし、魔猿たちも特に反抗するような態度を見せない。むしろ、さっきのボス格の魔猿は「ぜひそうしてくれ」と言わんばかりに何度も頷いていた。
こうして、森の中で出会った小さな女神様を連れてリーノ村へと帰還するのだが……まだ根本的な解決には至ってないんだよなぁ。
これからどうしようか。
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