第21話 小さな女神
「この子が……豊穣の女神……?」
穏やかな寝息を立てている緑色の長い髪をした子ども。
森の奥にこんな小さな子がひとりで寝ているという状況自体が謎だらけなのだが、ミリアからの情報によるとこの子が豊穣の女神メーテらしい。
「書物にあった通りですわ……大地を豊かにする代償として、魔力が枯渇してしまうこともあり、そうなると巨大な蕾の姿となって生まれ変わる、と」
「生まれ変わる……」
書物の内容が事実だとすれば、豊穣の女神メーテは魔力を使い果たして子どもの姿になってしまったということか。
「そうか。ローエン地方で野菜が育たなくなってしまった原因は豊穣の女神メーテが魔力を使い果たして子どもの姿になってしまったからなのか」
「で、では、これから農業を続けたとしても野菜は育たないのですか……?」
声を震わせながらそう疑問を口にしたのはジェニーだった。
……そう。
俺もそれが気になっていた。
本当にこの子が豊穣の女神だとするなら、今は魔力が枯渇している状態なのだろう。だとしたら、この先も当分は以前のような豊作は期待できないことになる。
「ミリア、その本にはメーテがどれほどの期間で魔力を取り戻せるのか書いてなかったか?」
「…………」
「? ミリア?」
「――あっ! は、はい! ざ、残念ながら、魔力を取り戻せる期間については何も記載がありませんでした」
「そうか……」
どうもミリアの様子がおかしいな。
まあ、この地を豊作にしてくれる豊穣の女神が魔力を失った状態というとんでもない事実が発覚したのだから無理もないか。
だが、ここでさらなる異変が。
「「「「「ほあっ! ほあっ! ほああああっ!」」」」」
子どもになった女神の事実がショッキングすぎて忘れていたけど、俺たちは魔猿に囲まれているんだった。
その魔猿たちが突然興奮して暴れ始めた。
「なんだ? 一体どうしたんだ?」
「ソリス様、お下がりください」
様子がおかしくなった魔猿たちがいつ襲ってきてもいいようにローチと部下のベック&デビットが俺とミリアの前に立つ。
一触即発の空気が流れる中、静かに眠り続ける豊穣の女神を見守っていたミリアが叫んだ。
「ソ、ソリス!」
「今度は何だ!?」
「メーテが目を覚ましましたわ!」
「この状況で!?」
緊迫した雰囲気の中、豊穣の女神メーテが目覚めた。
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