第16話 森の奥に眠るモノ
再び大失敗となったリーノ村での農業。
かつて【豊穣の大地】と呼ばれた姿はそこになく、日に日に荒れ果てていっているようにも映った。
もしかしたら土が悪くなったのかもと、さまざまな要素が分析の対象となったが……俺はあと数ヵ月のうちにこの地で豊作を成し遂げなければ領主としての地位を追われる。
それだけは絶対に避けたかった。
せっかくこんな過ごしやすい場所で暮らせるようになったのだ。
必ず原因を突きとめてみせる。
意気込む俺のもとへ伝えられたのはミリアからの新しい情報であった。
彼女によれば、以前俺を吹っ飛ばした猪型モンスターと戦ったあの森に何やら異変を感じ取ったらしい。
しかもそれはただの勘ではなく、専属メイドであるリタの話では信憑性が高いという。なんでも、そういった魔力の探知能力が生まれながらにして高いのだとか。
というわけで、俺たちは原因究明のため森の中へと突入。
この前も思ったけど……いいところだよなぁ。
何もなかったらテント張ってキャンプしたいくらいだ。
「……それいいな」
自分で提案し、自分で賛成する。
この森でのキャンプは楽しそうだ。
農作業が順調に進み、収穫ノルマを達成したらミリアを誘ってきてもいいかもしれない。
そんな楽しい時間を実現させるためにも、ここからの調査は非常に大切なものとなってくるな。
「さて……何が出るのか……」
周りに注意しながら考えを巡らせる。
もっとも可能性が高いのはモンスターによる影響だ。
いわゆる植物型のモンスターと呼ばれるタイプだが……そういえば、原作にも何体か登場していたな。
そのうちの一体がこの近辺に居着いたのか?
解せないのはなぜ姿を見せないのか、だ。
前に猪型モンスターと戦闘状態になった時はまったく気配を感じなかった。植物型モンスターは他と同様に人間を捕食対象としている。
あれだけ大騒ぎをすれば存在に気づくだろうし、おまけに大人数だったから襲撃してくる可能性は非常に高いと言えた。
それでも、ヤツは一切姿を見せなかった。
これが意味するものとは一体……謎を解明すべく進んでいくと、ここで再びミリアが声をあげる。
「こっちですわ!」
彼女が指さした方向は猪型モンスターがいた方向とは反対だった。
あの時は一刻も早く村の人たちに猪肉を食べてもらいたくて早く切りあげたため、周辺を詳しく調査していなかったな。
……ミリアが来てくれなかったら、きっとたどり着けなかっただろう。
感謝しつつ進んでいくと、視線の先に奇妙な光景が飛び込んできた。
その正体をハッキリと確認したくて走る速度をあげていくと――やがて全容が明らかとなった。
「こ、こいつは!?」
たまらず足を止めて叫んでしまう。
それくらい予想外の物体が森の中に存在していたのだ。
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