第17話 信じられない光景
森の中で俺たちが発見したモノ。
それは――超巨大な植物の蕾であった。
大きさは……十メートルくらいはあるか。
開いたら一体どれほどになるのか。
まさかとは思うけど、肉食植物じゃないよな?
だとしたらすぐにでも村人たちを避難させなくてはならない。
「どうしてこんなところに……いや、それよりもあれは一体何なんだ?」
情報量が多すぎて整理しきれないが、とりあえずはあいつの正体を探りたい。この地に長く暮らしているリーノ村の人たちなら何か知っているんじゃないかと尋ねてみたが、答えられる者はいなかった。
……というか、あんなデカい植物が存在しているのか?
いや、目の前にあるのだから否定しようがないのだが、それでも現実なのかって不思議に思えてくるくらいだった。
神々しいというか、触れるのもためらわれるくらいのオーラを放っている。
こいつはただバカデカいだけの植物ってわけじゃなさそうだ。
「まさかこんな植物があったなんて……」
「騎士としてさまざまな土地へ出向いてきましたが、こんなサイズは見たことも聞いたこともありませんよ」
「私も六十年生きていますが、初めて見ますね」
ジェニー、ローチ、スミゲルの三人がそれぞれ感想を語るが、「驚いている」という反応自体は共通していた。
それはミリアとリタも同じで、ふたりとも口が半開きになりながら巨大な蕾を茫然と見上げている。
気持ちは分かるが、一応確認はしておいた方がいいかな。
「ミリア、君が感じた気配はこいつのものか?」
「――はっ!? え、えぇ、間違いありませんわ」
いきなり声をかけてしまったせいもあり、ミリアはビクッと体を強張らせるも質問にはしっかりと答えてくれた。
その時、ふとある予感が脳裏をよぎる。
「もしかしたら……ローエン地方で野菜が育たない理由と何か関係があるんじゃないか?」
「確かに、これほど大きな蕾ですからね。育つための栄養を地中から吸い上げている可能性は十分に考えられます」
「なるほどねぇ」
「あり得ない話ではありませんな」
俺の予想はジェニーへと伝わり、そこからその場に居合わせた全員へと広まる。
そうと決まったらこの蕾を徹底的に調査しなければ。
周りに注意を払いつつ、一歩、また一歩と巨大蕾へと近づいていく――と、ローチが何かに気づいて叫んだ。
「ソリス様! 上です!」
「上? ――なっ!?」
慌てふためくローチの声につられて頭上へと視線を移す。
最初は複雑に入り組む木の枝と葉っぱに遮られてよく分からなかったが、いくつかの影が動いている。
「なんだ……あれは……」
生き物であるのは間違いない。
さらに目を凝らしてみると――ヤツらの正体が判明する。
だが、どうしてこの蕾の近くに?
狙っているのか?
それとも別の目的があるのか……
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