第15話 再調査
ローエン地方は別名【豊穣の大地】と呼ばれるほど農業が盛んだった。
何かを育てようと思えば大収穫間違いなし。
父上もまずはそこで経験を積み、ゆくゆくは自分の後継者として実家に戻す――予定だったのだろうが、その狙いは頓挫しかけている。
なぜか突然収穫量が激減したローエン地方。
原作のソリス・アースロードは他責思考の強い性格だったから、原因調査もせず、さらには具体的な解決策など講じず、領民たちに当たり散らして評価を下げていったに違いない。きっと、同じようにミリアから忠告を受けながらもそれを聞かずに暴走したのだろうな。
真摯に取り組み、それでも結果が出なければ、父上も「もしかしたら別に原因があるのではないか?」と考えるかもしれないのに。
まあ、そういったところが主人公にやられた一番の要因だよな。
――だが、今の俺は違う。
農業が盛んだったローエン地方で野菜が育たなくなった原因を究明し、それを解決して以前のような土地に戻すべく立ち上がった。
とはいえ、具体的に何をどうするかっていう対策についてはまったく妙案が浮かんでこないのだが……ミリアがかつて巨大イノシシ型モンスターを倒した森に何やら魔力を感じ取ったらしい。
彼女の専属メイドであるリタ曰く、ミリアは幼い頃から魔力の探知能力があったようで間違ってはいないだろうとのこと。
どのみち他にいい案もないので、とりあえず森の再調査へと向かうとしよう。
メンバーはアースロード家の面々と村の男たちというイノシシ型モンスター討伐の際とほぼ変わらない。
あえて言うならミリアとリタが加わったくらいか。
ちなみに、ミリアは少しだけだが風属性の攻撃魔法を使えるという。
リタはリタで護身術を身につけており、戦闘の心得があるらしい。
頼もしい限りだ。
以前よりもパワーアップしたメンバーで森の中へ足を踏み入れて調査を開始するも、目だった異常は発見できず。
だが、それでもミリアはやはりこの森が気になるようだ。
しばらく歩くと、川が出現。
村の決まりとしてこの川から先へは立ち入りが禁じられているという。
「もっと奥へは行けませんの?」
「あまり進みすぎると明るいうちに村へ戻って来られなくなります」
「それに、凶悪なモンスターが潜んでいるかもしれません」
村の若者であるノアンとハーヴェイがそう諭すも納得いかない様子。
……ただ、俺もこの先が妙に気になっていた。
何かがこの先にいる。
そんな予感めいた感覚があったのだ。
もしかして、ミリアも同じように感じているのか?
俺はゼリオル村長をなんとか説得し、川を渡って限界ギリギリまで森の奥を調査することにしたのだった。
その先でとんでもないモノが待ち構えていようとは、この時は微塵も想像していなかった。
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