第14話 信じがたい光景
リーノ村の人たちが農作業の手を止めている理由――それを目の当たりにした時、俺は思わず天を仰いだ。
「なんてことだ……この前の二の舞じゃないか……」
昨日まで実っていた多くの野菜が萎れてしまい、とても食べられた状態ではなくなってしまっていたのだ。
これにはリーノ村の人たちも落胆し、特にゼリオル村長は俺の姿を発見するや急いで駆けつけて土下座して謝罪を述べる。
「申し訳ありません、ソリス様! 食料を分けていただいたのにこの体たらく……なんとお詫びをしてよいか!」
「か、顔を上げてください、ゼリオル村長」
責任を感じているゼリオル村長だが……正直、これは異常だ。
たった一日で畑中の野菜がこのような状況になってしまうなんて普通じゃあり得ない。
詳しく話を聞いてみると、前回の収穫の際も同じ現象が起きたという。
しかし、それは空腹によって満足に動けなかった自分たちの管理不足という認識があったため、今回は報告しなかったそうだ。
となると、原因は別のところにあるか。
――っと、それよりもまずはミリアに事情を説明しておかないと。
「ミリア、残念だけど今日の農作業は中止だ」
「…………」
「? ミリア?」
俺の言葉に対してまったく反応を示さず上の空のミリア。
心配したリタが声をかけてようやく我に返ったようだが、何かあったのか?
「どうかしたのか、ミリア」
「ソリス……あの森には何がありますの?」
「森?」
彼女が指さす先にあるのは、以前大型のイノシシ型モンスターを倒した森だった。
「あの森がどうかしたのか?」
「妙な気配を感じますの……いえ、魔力と言った方が適切ですわね」
「なんだって?」
妙な気配?
魔力?
あそこは何の変哲もない森なんだけどな。
すると、ここで彼女の専属メイドであるリタから追加の情報がもたらされた。
「ミリアお嬢様は幼い頃より優れた魔力探知の力があるのです。恐らく、あの森に何か異変が起きているのは間違いないかと」
「そ、そうなのか? しかし、異変と言ってもなぁ……」
俺は一緒にあの森へ足を運んだジェニーやローチたちへ視線を向ける。
彼らはすぐに意図を理解して首を横へ振った。
つまり――目立った異常は確認できなかったという意味だ。
もちろん、それは同じだ。
確かにバカデカいイノシシはいたけど、この世界じゃ特別珍しいってわけじゃない。
そもそも、問題のイノシシはもう倒して食べちゃったから異変の起こりようはないはずなんだが。
「……もう一度調べてみる必要がありそうだな」
原因はまだよく分からないが、畑に異常が発生しているのは間違いない。
ならば、その事実を解明するために今できる最良の手段を実行していくしかなかった。
この場合は――あの森の再調査だ。
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